第四十回 時代劇フォーラムレポート


お待たせいたしました。
前回の更新が3月31日ですから、約4ヶ月ぶりの更新です。
とはいいながら今回の更新は本編のレビューではありませんで、
7月15日に開かれました「フォーラム・日本の時代劇文化を守ろう!」というものの参加レポートでございます。

これはフォーラムの名前にもありますように、
時代劇文化は風前の灯である、これは日本における文化の危機である。
と言う趣旨のもと開かれたものであります。
主催は「時代劇復興委員会」、京都の時代劇関係者などで作られた団体です。

フォーラム全体の流れですが、
1)東映剣会による剣劇実演
2)東映剣会による有名キャラクター名場面
3)中島貞夫監督による基調講演
4)新撰組
5)映像『時代劇製作の裏側』
6)時代劇関係者六者によるパネルディスカッション
でありました。

順を追ってレポートしてまいりましょう。

まず東映剣会による剣劇実演でありますが、その前に東映剣会について少し説明を。
この会は殺陣師および立ち回りを演技の中心とするいわゆる「からみの役者」を中心に
設立されたものでして、昭和31年に設立されました。
時代劇における立ち回りシーンでの立ち回りはこの剣会が担っているといっても過言ではありません。
代表的な所属メンバーとしては、福本清三や峰蘭太郎があげられます。
故人では川谷拓三、志賀勝などです。

この剣会のメンバーによる剣劇でありましたが、ようございました。
このとき実演された殺陣は「殺陣田村」というものでして、
一般の殺陣のなかでもそのエッセンスを抽出した構成になっております。
元々は沢田正二郎の新国劇で始まったものだそうです。

で、もちろんでましたよ、福本清三。
みたんですけど、斬りかかるときになんというか、疲れが見えたかな、という気がしました。
斬られる時はもちろん素晴らしい斬られ方だったんですが、斬りかかるときがどうも・・・。


その後に開会の挨拶を挟みまして、時代劇有名キャラクター名場面のコーナーです。
何をやるか、と言うと題名の通りです。
暴れん坊将軍から中村主水、早乙女主水之介、鞍馬天狗と有名どころが次々と出てまいります。
全編まじめにいくわけではなくて、間々に喜劇味も入ります。関西喜劇のノリですね。

様々なキャラクターが出てきたわけですが、私が最も気に入ったのが「月形半平太」
「月さま、雨が・・・」
「春雨じゃ、濡れていこう」
いいですね、このセリフ。別にこのフォーラム云々じゃありませんが好きなセリフです。
いっぺん言ってみたいですわな。
別に和傘でなくてもいいですよ。こうもりでもいいですからね。
「春雨じゃ、濡れていこう」なんて。


次が中島貞夫監督の基調講演です。
助監督時代にはマキノ雅弘監督辺りについておられて、
監督としては木枯らし紋次郎や大奥マル秘物語、極道の妻たちなどを撮られた監督です。

お話の内容ですが、『京都時代劇の魅力』という題でありまして、そういったことです。
いろいろと時代劇について話されたのですが、中でも興味深かったのがアジア時代劇論。
韓国を例に出されて話されたのですが、韓国の今ドラマが主流であるが、
前は時代劇が多かった、主流だったという話。
これを書いている時点で衛星放送でやっている「チャングムの誓い」などその類でしょうね。
中国などでも似たようなものだ、と。
そこからもっと話が派生していったんですが、メモをなくしてしまってよく憶えておりません。
フォーラムの後、大学の試験などですっかり頭から抜けてしまって。


続きまして、新撰組。またもや東映剣会の出番です。
京都を舞台とした時代劇、その多きな括りとして新撰組ものがあります。
それをメンバーでやったってえことですね。
スジ自体は大衆演劇であるようなオーソドックスな剣劇でございます。
剣劇ですので注目すべきはやはり立ち回りなんですが、やはり福本清三です。

近藤勇に着られた福本清三、うわあッとばかりに海老反りに、あのハリウッドまで行った海老反りです。
その後なんと、舞台からその下をつなぐ階段をゴロゴロと、新撰組名物「階段落ち」です。
しかも天下の福本清三。これは見ものでした。
いやあ、いいものをみましたよ。

休憩を挟んで5番目はビデオが流れまして、『時代劇製作の裏側を探る』と。
皆さんがイメージされる、そういうやつです。
衣装さんとか特殊効果の大将とか大道具小道具さんとか。
変わったところでは文字書きの職人さん。
看板から大福帳から何から、様々な字体で書いておられるという方です。
まさに職人芸でした。


さてと、最後に来ましたのが本フォーラムのメインイベント、パネルディスカッションです。
お題は『時代劇の未来と京都の未来』でありました。
が、内容はほとんど時代劇の未来だけで京都の未来はどっか行ってしまってました。

いろいろ意見が出たわけですが、
ひとつの大きな問題はテレビ時代劇には予算が少ないということのようです。
時代劇は衣装は必要ですし、セットも要ります、時代考証も必要なら馬だって用意せねばなりません。
そういうことでお金がない、遠くにもいけない、困った、と。

また、局側が持ってくる企画自体も安易なものが多すぎるということでした。
よく練られたわけでなく、スポッとなんか持ってくる。
今のドラマなんかみると分かりますが、原作はほとんど漫画ですわな。
カメラマンさんでしたが、今は漫画ならほとんど審査なしで通すというくらいだそうです。
だから企画力が脆弱である、時代劇方面にもいい企画は来ない、と。
昔の必殺仕事人系列も局の企画からでしたからね、今はそんないいのを持ってくる人がいない、と。

もうひとつ、場所がない。
ロケをするにしてもなんにしても、時代劇で使うことのできる場所が限られてきたということです。
どこいったって電線はありますし、アスファルトもありますし、川は三面張りですし。
ほとんど決まったところで撮らざるを得ないという状況に陥ってしまっているわけです。
ですから、本当に大きな背景が必要になってくると、
私の大嫌いなCG合成になってしまうということのようです。
そうしないと、画面ができないんだそうですよ。


と、以上のようなことを聞いてまいりました。
とにかく現在、時代劇は大いに危機的状況にある、
そこを何とか打開しなければならないのであります。
この度、時代劇復興委員会というのも立ち上がりました。
署名活動もしているようです。
私も書いてまいりました、皆さんも見かけたら協力してあげてください。

というところで、4ヶ月ぶりの更新でした。

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