今回が鑑賞記移行後の初回でございます。
第九回は尾上松之助主演「渋川伴五郎」(大正11年・日活)です。
いつものようにまずは粗筋を。
渋川流柔術の道場主の倅、渋川伴五郎(尾上松之助)はある日、高弟の悪さを懲らしめんとして一悶着起こす。
それを恨んだ高弟は伴五郎の父に讒言し、ついに伴五郎は勘当の身となる。
しばらくは知り合いの魚屋のところに居候をしていた伴五郎だったが、ある日相撲取り同士のけんかを仲裁する。
そのことが大名の有馬公の耳に入り、藩に召抱えられる。初仕事は化け物の大蜘蛛退治であった。
伴五郎が大蜘蛛退治のため江戸を去り幾日か後、
またもや同じ高弟が今度は道場を乗っ取らんと伴五郎の父を殺害に及んだ。
伴五郎の妹は兄とともに敵を討つため、伴五郎探しの旅に出る。
今となっては半ば伝説化している尾上松之助作品です。
7月にCSの時代劇チャンネルで放送されたものを見ました。ちなみに弁士は澤登翠さんでした。
映画ですが、これは本当に貴重な作品です。
尾上松之助が出演した作品は1000本を超えると言われていますが
当時は上映が済むとフィルムはすぐ捨てていたそうで、
完全に残っているのはこの「渋川伴五郎」と「忠臣蔵」のみだそうです。
断片のみのものでも「児雷也」と「野次喜多道中記」ぐらいのものだそうです。
内容に関してですが、肉襦袢を着込んでの相撲や大蜘蛛の人形(ぬいぐるみ?)、
閻魔堂が勝手に組みあがる所など当時の手法の見所は多々あります。
チャンバラに関しては、やはり型を重視するようで、スピード感はありません。
まあ、今のような殺陣はもっと後年、阪妻あたりからですので仕方ないですが。
いろいろ書きましたが、見て損するものではありません。
私らのようなものにはたまらない作品であることの変わりはありません。
機会があればごらんになられることを強くお勧めします。
ちなみに、当サイトの関所からリンクされている「マツダ映画社」でビデオの販売をされています。
懐の暖かい方はご購入されるのもまた一計かと存じます。
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