第二回は池波正太郎の小説が原作の『鬼平犯科帳』です。
私の知る限りでは、昭和から平成にかけて、四人の長谷川平蔵がいます。
では、各シリーズごとに見ていきましょう。
松本幸四郎(白鸚)期
最初は先代の松本幸四郎が演じたシリーズです。
この頃は『鬼平』がまだ連載中で、大滝の五郎蔵が、一話限りで死ぬなど、先が不確定な感が見られました。
元々、池波氏の書かれた“長谷川平蔵”の人物像は、この松本幸四郎をモデルにしたそうです。
ですから、そのモデルが演じたわけですから平蔵役はぴったりでした。
また、古今亭志ん朝の“木村忠吾”や加東大介の“岸井左馬之助”など、脇役もなかなかのものでした。
そして、特筆すべきはテーマ曲です。これが、単調な曲ではありましたが、
『鬼平』の感じに丁度合っていてなんとなく口ずさんでしまう曲でした(歌詞はありません)。
丹波哲郎 期
これにつきましては、1,2度見ただけであまり記憶に御座いませんので、失礼ながら割愛を致します。
萬屋錦之介 期
私は錦之介版は第3シリーズしか見ておりませんので、それについて書きましょう。
このシリーズは、単刀直入にいうと少し暗いですね。
こういった暗さは、晩年(そこまででもないですが)の錦之介ものを見ると、よく感じました。
この暗さが何なのかは、まだ私の中で答えが出ていません。
さて、内容ですが可もなく不可もなくといったところでしょう。
強いて言うならば、この第3シリーズは、彦十を西村晃が演じており、
それがなんとも小綺麗で違和感を覚えたというところでしょう。
中村吉右衛門 期
『鬼平』の俳優別だと、最も長く続いているシリーズではないでしょうか。
私がテレビで最初に見た鬼平も吉右衛門版でした。
皆さんご存知でしょうが、中村吉右衛門は上記松本白鸚の息子です。
鬼平でも白鸚期に平蔵の息子の辰蔵役をしていました。
また、昔から数々のテレビ時代劇に出演しており、そのほうではベテランであります。
肝心の作品内容についてですが、良くできていると思います。
平成作りのテレビ時代劇の中では、最も出来のよい作品だと思います。
原作がしっかりしているせいか、時代考証もほとんどあらが見えません。
このシリーズで最もはまり役であったのは、江戸家猫八扮する“相模の彦十”です。
この彦十は『鬼平犯科帳』全体においても彦十独特のひょうきんさや、
お世辞にも上品とはいえない彼の雰囲気が一番よく現れていたと思います。
総括
やはり『鬼平犯科帳』は崩れていくテレビ時代劇の中では優良株です。
原作がしっかりしているというのも理由のひとつですが、
最大の理由は、『鬼平』に出る役者さん達が時代劇を知っているということです。
台詞の間合や立ち居振る舞いなど、他の時代劇とは一線を画しております。
現在は休止中ですが、また復活してくれることを願っております。
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