絨毯爆撃作戦

2002年に敢行した、雑草駆除の一連の作業である。
アジトの庭は「だだっ広い」。広い、のとは、ちとわけが違う。
前に「駄々」がつくのだ。
よって、車を止める、ガーデンパーティをする、キャンプを張るなどの多用途性がメリットである。
デメリットは雑草で、ある。
夜の夜風に春のにおいを感じる頃、そいつらはやってくる。
五月(さつき、と読まれたい)、梅雨(ばいう、と読まれたい)を迎えると、まさに一晩毎に成長の度合いが高くなる。
忍者は麻(成長が早い)を毎日、飛んでジャンプ力を身につけるという。
そんな話を信じてしまうほどの説得力を持って、やつらは成長するのだ。
ハウスキーピングという言葉がある。
家を手入れする、維持するという意味だと確か思う。
庭なんて、他人がよく来るわけではないし、個人の好き勝手にしたらいいじゃないか?という感情もわき上がる。
しかし、そうではなかった。少なくともこのエリア248では。(地番が248だから)
周りは農家で老人が多い。メーカーオプションだったはずの女性(俗にいう嫁)の友人が多く来る。
若い女性だ!
「公民館じゃねーの? これ?」と最初に思わせたアジトはまさにその機能を発揮し始めたのだ。
アジトのサロン化現象である。
これはイカン、と思いましたね。みっともない、と。
植物も生き物。
みんなで大切に、なんてうそっぱちだ。
花咲く植物は愛でられ、そうでない植物は人為的に淘汰される。
雑草オアシスと化したアジトは近隣住民から「ちゃんとしてない家」の称号を与えられるであろう。
駆除の方法は2通りである。
エントリナンバー1、手で、または草削りでむしる、削り取る。
エントリナンバー2、薬剤散布による駆除。
薬剤散布については意見の分かれるところである。
考えようによっては農薬栽培は是か非か、という話にまで発展可能だ。
しかし、雑草は会議室ではなく、いま、目の前の庭、畑、田圃で生えているのだ。
無論、横着者には魅惑のアイテムである。
蒔くと枯れていくのだ。単純かつ楽。クサカンムリに楽と書いて薬。
言い得て妙だ。
薬剤の価格は様々で、最初はいちびって、安いものを試してみた。効かない。
まるで雑草のDNAに抗体があるんじゃないのか? と思うほどである。
それとケミカルハザードが発生した。
アジトの水源は地下水である。
地下水脈への汚染が懸念されてしまったのだ。ただし、効果は80年後らしい。
しかし、次代に「負の遺産」を渡すわけにはいかない。
そのとき、このアジトの所有者が我が係属でなかったとしても。
前のオーナーは夏のサンシェードに、と簾を残して置いてくれた。
これが朽ちてきた。
絨毯爆撃作戦の発動である。
内容は下記のとおり。
1.簾を雑草地帯に敷く。
2.簾に火を放つ。
3.灰を始末する。
いい兵器、戦略ほど部品点数が少ない、単純である、と言われる。
まさにこの作戦がそれだ、とほくそ笑んでみた。
作戦は2003年夏に実施された。
作戦にあたりスタッフの編成をする。
指揮官・俺。
兵隊・私。
結局一人で全てやるわけだ。
戦いの火蓋は切って落とされた。
火は簾を伝い、じわじわとその勢力圏を広げていく。
火は男のココロをくすぐるアイテムだ。
見ているこっちも興奮してくる。
約30分で火は落ちた。
残されるは、累々の雑草の焼死体。
こう書くと、植物も生き物であることがより強調される(=強調構文)
それを箒でならす。
ミッションコンプリート(作戦完了)の瞬間である、はずだった。
雑草とはよく言ったもので、表面は焦げたが、まだ生きている。
しっかと地面に根を下ろしているのだった。
エントリナンバ1「手で抜く」の戦術に切り替えなければならなかった。
しかも、地面は焦土と化している。
メーカーオプション(俗に言う嫁)に叱られた。
高度の知略を駆使して行われた30才前半参謀の作戦は、一転、小学3年生レベルの
いたずら・火遊びの烙印を押された。
敗北である。
次回は夏の夜を楽しく過ごす屋外食事施設設置の話を書きたいと思う。