なまこと私。
- 冬の味覚の王者はなにか?
- その人の育ちや環境、成長過程で嗜好は変わるものである。
- 俺は海辺の育ち、戦中派の親のもとで育った。
- 親父は肉より魚が好きな男。
- 母親は魚を完璧に、さばき、調理の出来る女。
- 地元は毎日、完璧に魚の供給の出来る海辺。
- そんなわけで、魚は我が家庭内で権力を誇った。
- 肉はどうか?
- 子供達は肉が好きだ。
- 刺身で飯が食えるか?と考えながら刺身を食った。
- 焼き魚、煮魚は飯が食えるアイテムだと渋々、承認した。
- 冬は海鼠(なまこ)が権勢を誇っていた。
- これは大根おろしと混ぜたもの。
- 後年、俺も自覚するのだが、海鼠は日本酒に良く合う。
- 関東以北では、その地位は「ホヤ」ではなかろうか?
- しかし、いかんせん、子供の俺だ。
- 飯のおかずになる、ならないは別にして好きになったのは高校以降か?
- 食感が好きになったのだ。
- 海鼠の真骨頂たる内臓「このわた」が好きになるのは、まだ後だ。
- なまこにはグレードがある。
- 赤海鼠と青海鼠である。
- 赤鬼と青鬼ではない。
- まさに、見た目で赤い斑点の多い赤海鼠、全体的に青い青海鼠。
- 値段は赤海鼠のほうが高い。
- 柔らかいからだ。
- しかし、我が大家族ではもっぱら青海鼠。
- 安いからだ。
- だから、海鼠は固くて、ガジガジ咀嚼するのが醍醐味だと思っていた。
- アジト第一期生活でオプション(俗名・嫁)と暮らすようになった。
- 赤海鼠の存在を知った。
- そして
- 海鼠とは損耗率の高い食材であることを知った。
- 海鼠は丸のままで買ってくる。
- こんなに食えるか?というボリュームだ。
- しかし
- 包丁を入れると水が出て、20%位に萎縮してしまうのだ。
- うわ、ちっちぇ〜。
- ここから、背を開きコノワタを抜き出す。
- コノワタから包丁の背を使い、慎重に砂を出す。
- コノワタは完成だ。
- ちっちぇーなまこを薄切りする。
- ぬるぬるして難しい。
- そうして、なまこは俺を幻惑の世界に誘うのだ。
- 日本酒と共に。
- さて、子供達が成人した実家での海鼠環境はどうなったか?
- 最大競争倍率は「コノワタ」に集中するのが道理。
- と、思ったが、家庭内宴会時などの優先権を俺は握った。
- なぜか?
- 他の兄弟は「コノワタ」は苦手らしい。
- 日頃、実家に帰るたび「海鼠食わせてくれ〜」と叫んでいた
- 俺に軍配は下ったのだ。
- かくして、我が一族で大の海鼠好きとして親戚縁者にまで
- その称号を知らしめた俺である。