- 福引き抽選会作戦
夏と冬に大きな福引きを行う。これが俺の前職でのハードディズであった。
福引きには、お客と店側の駆け引きが行われる。
他の項にも書いたかもしれない。
お客の心理としては「多く買う=多く引けるほど当たる」と思う。
至極、当然だ。
しかし、くじは籤である。
1回で大当たりを出す人もいれば、100回引いても出ない人も出る。
パチンコの確率の話を少し。
パチンコも確率で当たりが出るようになっている。1/356とかそういうの。
これは355個のハズレと、1個の当たりがあるということ。
しかも、ハズレを引いても、そのハズレをまた戻すという仕組みになっている。
だから、常に、1/356である。
お分かりか?
福引きは違う。
- 当たりを残したまま、ハズレが出れば、確実に当たりの確率は高くなる。
それを知っているのはスタッフだけだ。
しかし、1度、当たりを投入すると、いつ出るかはスタッフ側でもワカラナイ。
- 店によっては何時頃に出してくれとか言うヤツがいた。
- 俺はそれはしなかった。
よって、有効な攻略法はない。
福引きを実施する方としての醍醐味は下記の通り。
1.予想した回転数にどれだけ近づいた実績が出るか?
2.景品が過不足なく進んでいるか?
3.お客さんの列が出来ていないか?
「1」に関しては、オーバーすると、最後のほうのお客さんがハズレばっかりになる。
「2」に関しては、オーバーすると景品の手配を現場でしないとイケナイ。
- 余るとあまったで店からいい顔をされない。
- 足りないよりは良い!
- ちなみに抽選回数が予想よりも増える原因は何個かある。
- その1。売上げが予想よりも上回った。
- その2。抽選参加用件を満たしたお客が多かった。
「3」に関しては、列が出来るということは待たされると言うことである。
- 待たされたあげくにハズレでは、怒る人も出る。
もちろん、この3点を回避できる方法はある。
回転数の動向を見ながら、毎日、当たりやハズレを調整するのである。
- 毎日しない場合は最終日にホントにハズレばっかりになってしまうわけだ。
- だから、確率を平均化するためにコントロールセンター(=俺)と現場の連絡を密に取る。
- 余るようなら、当たりを増やす事もする。
- またはハズレを抜くこともある。
- 同じ結果でしょ?
- 前に、毎日の回転数を予想しながら、その日その日で玉組みをする上司がいた。
- この方法は余れば問題ないが、不足した場合はかなりのダメージになる。
- だってもう当たり出ちゃってるから。
- だから俺はそこまで厳密には玉を組まなかった。
さて、景品の過不足。
- 過分にはいいが、不足はスリリングな展開になる。
- 店は商売。
- しかし、景品に使用できる商品は賞品とは違うものだったり、個数が何千個の世界なので供給が出来ない。
こんな場合は、俺の登場だ!
近隣の現場から在庫を回すのである。
俺の四式荷物車に景品を積み、その現場まで走る。
一時、会社が倉庫を借りていたときは、即動できるよう、ストックしていた。
- やがて、それも出来なくなり、近場の同じ系列の店から在庫景品を回す。
- だから、各店にどれだけ、なにがあるかをいつも把握していた。
- ついでに言うとお菓子だったら賞味期限までも!
列が出来るときの回避方法の代表的なモノは、稼働台数を増やす、ということだ。
- 抽選器が2台しかなかったら、3台にする。
- そういうモノである。
- 新参兵が犯す間違いでよくあるのが玉組をして抽選会をする。
- ここまでは当然。
- 抽選会が進む。
- 仮にナンバー1が終了。
- ナンバー2しかない、というときにそのままにしておくことだ。
- ナンバー1は空のまま放置される。
行列は一時のモノなので、このときに採る方法は「カマを割る」のである。
- 俺は抽選器を「カマ」と呼んでいた。
- 玉の残っているカマの玉を分けて、空のカマに入れてフロントの台数を増やす。
- こうすれば処理能力が高くなるので、行列を緩和できるのだ。
この方式だと、その台に対応するスタッフが居ることが前提となる。
- 本来はカマの台数というよりはスタッフ総数がキモになるかもしれない。
カマそのものが足りない場合は、俺の登場。
- 景品の時と同じく、他の店から器械を借りてくるのだ。
- 時間がないときは現場のスタッフにも中間会合地点まで走らせる。
- こうして、供給までのスピードを上げる。
こうして、華やかな?抽選会場の舞台裏では、NASAにも勝る、ナビゲーションシステムが稼働していた。