■街の様子、タクシー事情、バンクーバー市役所訪問
歩道は(道路)ほぼ100%アクセス可能。
バンクーバーの街は本当に坂道が多い。そのため、電動車いすや、電動シニアカー(日本でも高齢者が乗っているカート)の利用者が多い。手動式の車いすでは、坂道の移動には苦労するだろう。それでも、この街が、世界の人口100万人以上の都市で、「世界一住みやすい都市」に昨年まで10年連続1位(今年度は二位タイ)に選ばれる背景には、公共交通機関と住環境整備の発達が欠かせないポイントになっているのではなかろうか。
車いすに乗ったままで(ただしスペースは車いす1台のみ)利用できるタクシー。
タクシーも車いすのまま乗車できるタイプが多数走っている(街を走っているタクシーを見た感じではあるが、タクシー全体の30〜40%を占めるのではなかろうか)。だから、わざわざ予約をしなくても直ぐ乗ることができる。
聞いたところによると、スロープ付のタクシーの料金は、一般のタクシーに比べてほんの少し高いとのこと。しかし、本当に多数走っているし、一般のお客も乗せているところを何度も見たので、割高なのかは、やっぱり???
タクシーの車内にて。車いすのままの乗車は一人だけ。妻は、前列のシートに座り、車いすはたたんで積んでもらった。乗り降りは、ドライバーが手伝ってくれる。体験した感想…乗り心地は、あまりよくない。ガタガタ揺れる。慣れれば平気なのだろうが、ちょっと勇気が要った(笑)
タクシーに乗って向かった先はバンクーバー市役所!障害者に対する福祉サービスの内容や、バンクーバー市に暮らす障害者の生活実態などを教えてもらいたいと思い、アポなしで突撃した。本当に勇気が要った!
バンクーバー市役所に到着し、中の案内所を見て驚いた。人口200万人の都市なのに、わずか2人で切り盛りしているのだ。ここで先ず感じたのは、小さな政府像だ。余計なことにはお金をかけない、最低限の人数(経費)で最大限のサービスを生み出す構造を目指しているのだろう。
案内所の中年の女性は、とても親切だった。私たちの拙い語学力に辛抱強く付き合ってくれた。そして、アポ無しであること、障害者に対する福祉政策や提供しているサービスについてのアウトラインなどについてお話を伺いたいんだ…という主張を理解してくれた。感謝! 彼女は、福祉サービスの担当部署へ連絡を取って「日本人の障害者2名が、バンクーバーの障害者福祉政策について話を聞きたいと来ている」と伝えてくれた。
しばらくして、障害を持つ初老の男性と、アシスタントスタッフの女性が私たちを出迎えてくれた。そして、エレベーターに乗ってミーティングルームへと案内してくれた。
内心はドキドキであった。この事態、どうしよう…まさか、こんな風に歓迎してもらえるとは思ってもいなかった。福祉課の受付窓口で、サービスを紹介したパンフレットでもいただければラッキーかな…くらいの気分だったので、英語でどう伝えればよいのか。面と向かってのミーティングになるなんて夢にも思っていなかった。
その後のことはあまり記憶にはない。とにかく市役所側の厚意を無駄にしてはならないと思い、自分の思いを一生懸命に伝えた。ラリーさんとティナさんは、ゆっくりと連邦政府とバンクーバー市の福祉政策について語ってくれた。「アメリカ合衆国のADA法(障害を持つアメリカ人法)と比べた場合、カナダの方が人権意識も制度も数段進んでいる」「カナダにおいては、肢体不自由・視覚・聴覚・精神など、全ての障害に関係なく、教育、就労、余暇など生活のあらゆる場面で差別があってはならないという理念がある」などの基本的なことを教えてくださった。
涙が出そうなくらいに申し訳なかったのは、随分な時間を使わせたわりに、私たちが十分に理解できなかったことである。最後に、「ここは政策を作るだけで、具体的な実務や、法案や条例が出来るまでの運動を行っている障害者の団体があるので、行ってみなさい」と言って、"ブリティッシュコロンビア州・障害を持つ人たちの連合会"の住所を教えてくれた。「私たちのところには、あなたたちが必要とする書類などはないのよ。業務はアウトソーシングされているから。そこへ行けば勉強になると思うわ!」…と優しく見送ってくれた。私たちは御礼を言って、市役所をあとにした。なんてやさしい人たちなんだろう…。