「被爆二世の援護を求める集団訴訟」 | |
1988年全国被爆二世団体連絡協議会が結成されました。以後30年以上にわたり国に対し被爆二世に対する援護を求めてきました。被爆者援護法の中に被爆二世への援護を盛り込ませることを大きな目標とし,被爆二世の実態調査や被爆二世検診の充実(がん検診の追加など)を求めてきました。これに対し国(厚労省)は「親の受けた放射線の影響が被爆二世にあるという科学的な知見がない」の一言を30年間言い続けてきました。現在,被爆二世に対する法的援護はありません。単年度予算措置の「被爆二世検診」があるのみです。多くの被爆二世は自分や子ども(三世)の健康不安を抱え毎日生活しています。私たちは,これまで国会議員の学習会や全国署名(37万筆以上)や毎年の厚生労働省交渉などを取り組み,政治的な解決を目指し取り組んできました。しかし,これまで大きな前進を勝ち取ることができませんでした。 在外被爆者や被爆者認定の問題も裁判で前進してきました。仲間からの「裁判闘争しかない」との声の中,2012年の総会で「裁判闘争を視野に入れた対応を検討します。」とやや及び腰の方針を決定し,それ以来,学習会や弁護士との打ち合わせ会を繰り返し,ようやく2017年2月17日広島地裁(親が広島原爆で被爆した二世),同20日長崎地裁(親が長崎原爆で被爆した二世)への集団訴訟を行うことができました。 私たちの要求は,これまで苦しみ続けてきた二世がいるにもかかわらず立法措置を怠ってきた国会に対し立法不作為を認めること。そして,二世に対しても被爆者やみなし被爆者と同等に援護措置を講ずることです。 私たちは,両地裁へ度重なる準備書面の提出や意見陳述を行ってきました。多くの原告が自分や家族の苦しみや悩みをさらけ出し証拠として提出もしました。放射線の次世代への影響に関する多くの動物実験や研究結果も提出してきました。それにも拘わらず,長崎地裁では2022年12月12日「放射線の遺伝的影響についてはいまだ確立しておらず,その可能性を否定できないというにとどまる。」広島地裁においては,2023年2月7日「被爆二世についてはその身体に直接原爆の放射能を被爆したという事情は認められない。原爆の放射線による遺伝的影響についてはその可能性を否定できないにとどまる。」言う判決を出しました。両地裁とも放射線の遺伝的影響のメカニズムを全く無視しており,許すことのできないものでした。弁護団によると,「国の方針(放射線の影響をできるだけ小さく見て原子力政策を推し進め,被爆者の援護を次世代へは引き継がない)を忖度し結論ありきで,その結論へ至るために論理を組み立てている。」というものでした。 その後,長崎は2022年12月23日に福岡高裁へ,広島は2023年2月16日広島高裁へそれぞれ上告しました。上告理由の中には両地裁の遺伝的影響についての誤った見方など,私たちが提出した多くの証拠に対して正面から向き合っていないことなどが挙げられています。 2024年2月29日福岡高裁の判決では,「被爆者援護法は,原爆投下時にすでに出生していた者を前提に援護の対象としている。被爆者やみなし被爆者と同等の措置を講ずるか否かについては,国会の総合的政策判断にゆだねられる。」という内容のものでした。 広島高裁では,2024年12月13日に判決が出されました。内容は「現実に放射線を直接浴びた可能性のある被爆者及びみなし被爆者と,被爆時に存在していなかった被爆二世とでは放射線の影響は医学的・科学的知見において顕著な差がある。」「被爆二世の訴える健康不安に対処すべく援護の対象に加えるか否かは立法府の合理的判断による。」という受け入れがたい不当判決でした。 両地裁・高裁判決は被爆者援護法の趣旨である「放射線により健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれている者を援護の対象とする。」と解されることについては認めているにもかかわらず,今回のような判決を下しました。また,広島高裁「黒い雨判決」をも覆すようなものでした。 私たち全国被爆二世団体連絡協議会は,これからも最高裁に上告し闘いを継続します。さらに,被爆者問題議員懇談会とも連携し,立法府での政治的な取り組みも強化してくべく準備を進めています。これからもご支援ご協力よろしくお願いいたします。 |
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全国被爆二世団体連絡協議会 平野克博 | |
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