活動報告

講演「NPTと核兵器禁止条約〜現状と課題を考える〜」
 2023年10月13日地区労会館において「長崎県被爆二世の会」主催で上記の講演が行われました。講師は中村桂子長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)准教授で、今年8月にニューヨークで開催された準備委員会に参加。その報告をしていただきました。

  【以下講演の要旨】
   NPT核拡散防止条約は核兵器保有国を含む191ヵ国が加入しており、@核軍縮、A核不拡散、B原子力の平和利用を三本柱としている。そのために5年に1度の再検討会議、再検討会議の間に3回の準備委員会が設けられている。2022年の再検討会議では最終文書の採択ができなかったので、2026年の再検討会議ではその立て直しが期待されているが、今回の準備委員会では、各国の対立が一層鮮明になり、議長の総括文書も各国間の対立により記録から消されてしまった。
 核保有国の米英仏と中ロの対立は、相手を非難することで自国の軍拡を正当化する「負のスパイラル」に陥っている。西側欧米諸国はロシアのベラルーシへの核兵器配備を強く非難するが、NATOの核共有や米英によるオーストラリアヘの原子力潜水艦配備に対するロシアや中国の批判には耳を傾けない。非核保有国からは、どのような形であろうと自国の安全保障を核兵器に依存することはNPTに違反するという意見も出ている。オーストリアやメキシコなど核兵器禁止条約支援国は、自分たちの核兵器は正しく、相手側のは悪いと区別することが間違い、核兵器はどちらも悪いという立場だ。
 日本政府代表の武井俊輔外務副大臣は、核抑止を肯定した広島ビジョンを「核兵器のない世界への強固なステップ台」と強調し、演説の3分の1を割いて福島の「ALPS処理汚染水」は安全だと訴えた。中満泉国連事務次長は「核兵器が究極の安全保障というのは偽りの物語」と発言。
 今年はまた11月27日〜核兵器禁止条約第2回締約国会合が開かれる。昨年6月の第1回締約国会議で決まった「ウィーン行動計画」の実施に向けて、各国が担当する作業部会がこの間の進捗状況を報告し、問題点を共有する。作業部会には条約の普遍化、被害者援助、核軍縮検証、NPTとの整合性、ジェンダー問題などがある。現在署名93ヵ国、批准69ヵ国で、成立以来増加している。核禁条約第6条、7条には、核実験による被害者を含めた核兵器の被害者への援助や環境修復を行うとしている。
 現在NPTは大国の思惑に振り回されている感があるが、核兵器禁止条約に集う多くの国々や市民グループの動きは活発だ。そこに核兵器廃絶に向かう「砂の中の砂金」を見つけることができるのではないだろうか。


 長崎県二世の会の
トップページに戻る
 二世協の
トップページに戻る