02.02 脱走名人 チョビ
我が家の暴れん坊、ハスキー犬のチョビが死んでしまった。いつの間にか、妊娠し
てしまい、子犬の誕生がもうすぐと家族全員が心待ちにしていた矢先であった。高齢
になって初めての妊娠、出産には勝てなかったみたいである。こんなことなら妊娠し
なければよかったのにと悔やまれる。
このチョビ君、年は8歳(人間でいえば50歳ぐらいか?)、体重は30キロにはなろう
とする大型犬であった。怖いもの知らずで力が強く、水浴びが大好き、好奇心のかた
まりみたいな犬であった。その特技は「脱走」。何度、起きがけのパジャマ姿でパンを
片手に追いかけ回したことか。
「なんだよ」と迷惑がっている顔 「わっ、ぶったまげた」
普段は、高さ2メートルぐらいの塀や木戸に囲まれた庭に放し飼いにしていたが、思
春期ぐらいになると外の世界に目覚め、散歩だけでは事足りず、家族が寝静まった夜
の間に、どこかの不備を見つけては脱走を繰り返すようになった。木戸をこじあけ、木
戸をぶちこわし、温室の窓をこじ開け、花器を踏み台にし、ビールケースを踏み台にし、
焼却炉を踏み台にし、竹柵をかいくぐり、金柵をよじ登り、----------
圧巻は、庭木を踏み台にし、2メートルの高さがあるブロック塀を越えるというものであ
った。この時ばかりは、長い散歩紐でつないでいたため、塀の向こう側で宙ぶらりんに
なってもがいていたが。
脱走名人の血筋は、母親譲りである。母親も「脱走大好き犬」で、やはり、放し飼いの
庭からしょっちゅう抜け出ていた。なにしろ、近所なので我が家の子どもたちがその現場
をしばしば目撃することとなった。とうとう、そこのお宅は、2メートル余の高い金網をぐる
りと張り巡らしたが、脱走は止まらない。
その手口はまず金網をよじ登る。初めのうちは登ってはガシャガシャと落ちるのを繰り
返していたが、そのうち、上手になって越えるようになる。そのたびにいろんな改良を施
したみたいである。母親犬も負けてはいない。上によじ登ってから横に移動するというヒ
ネリを加えるようになったらしい。脱走は止まらない。とうとう、その金網のてっぺんに庭
の内側方向に角度を付けた金網をさらに継ぎ足した。やっとのことで脱走が止まったみ
たいである。現在もどこかにスキはないかと金網登りにチャレンジしている。
愛犬チョビも、手を焼かせてくれる一方で、山に出かけるときは機関車のように引っ張
ってくれたり、ヘビやネズミやモグラと遊んだりして、楽しみ、そして楽しませてくれた。
「犬の天国で、子どもたちと元気一杯走り回ってほしい。」と願うばかりである。
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