02.12 マツタケ犬! 誕生?
我が家のモカちんは、マツタケ犬である。今年の秋も、マツタケを採りに我が家の山に
何回か分け入ったが、モカちんを連れて行く内に、なんとマツタケの強烈な芳香を嗅ぎ分
けて、そのありかをつきとめだしたのである。マツタケ犬と名付けたゆえんであるが、これ
だけで終わらないところが我が迷犬である。
この犬は、今が腕白な盛りであり、履き物や手袋など口にくわえられる物はすぐもって逃
げてしまいそのたびに追いかけっこをしなければならない。いくら、怒っても毎回同じことの
繰り返しであり、迷犬ぶりを遺憾なく発揮している。ある日、この腕白坊主をマツタケ採りに
連れて行ったところ、大きなにぎり茸が道ばたに生えていた。それは大きくて肉厚の笠を開
きたいだけ開いた立派なキノコであった。これを試しに「ホイ」とやってみたところ、ステーキ
を食べるみたいにムシャムシャとおいしそうに食べてしまったのである。今、思えばこれが
悪夢の始まりであった。
何回かマツタケ採りに同行させたある日、例によってモカちんと山に分け入り、犬を後方斜
め下に位置させ、マツタケを探していた。突然、何を血迷ったのか、我が輩を遠回りするよう
にすり抜けて前方に出るや、シダに囲まれた中の何かを「パクッ」と食らいついた。「アッ」と
思うや一目散に近づき、力の限りげんこつを加えたが、時、既に遅し!そこには、大きな笠を
したマツタケがその3分の1ほど欠けた状態で堂々と生えていた。「キャン」ともいわず飛び退
いた犬の口にはマツタケの切れ端がしっかりとくわえられていた。目が合うや、もっていた熊手
の棒でさらに一撃を加えようとするが、敵もさるもので我が輩のアタックゾーンには入ってこな
い。この騒ぎのおかげで、鎌を落としたのに気づかす、山においてくるはめになってしまった。
その日以来、山に連れて行かなかったが、やはり1人で行くのは面白くない。「きょうは、はー
マツタケも出ちょらんじゃろう」ということで、ある日、また、連れて行った。マツタケがありそうな
ところにくると、盛んに「クンクン」と嗅ぎまわり、落ち着きがなくなる。「ここにはないじゃろう。
よー探して見ーよ。」と安心げにながめていたら、シダの方にサササッと近づき、「パクッ」とやっ
てしまった。たった一本だが、あったのである。「アッ」の一言、すかさずのげんこつ、間をおいた
熊手の一撃は前とまったく同じ行動パターンであった。しかし、この時は自分が見落としており、
本来なら手に入らないところだったので、形こそ一部損壊であったが、ものは考えようと納得して
しまった。
余談であるが、「まさか、毒キノコは食べんじゃろ。」と真っ白いテング茸をやってみた。これを
かじるのである。「パクッ」とやってしまい、もう見境がない。あわてて、口から取り出す始末である。
迷犬モカちんを、来年こそは、本当のマツタケ犬に育てよう。
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