03.7 竜が巻い上がったか
7月18日夜11時30分頃だろうか。寝ようと横になってしばらくすると、突然聞いたことも
ないような、ありきたりのゴーとかビューでは言い表せない、思わず恐怖感を持たせるほど
のすさまじい音を伴って、突風が吹き始めた。それは、最近の台風で経験した風速20〜30
メートルよりもまだ強烈と思われた。その突風は家全体を振動させ、窓ガラスを今にも突き
破りそうで窓には怖くて近寄れないほどであった。この状態が続けば家のどこかが間違いな
く壊れてしまいそうであった。幸いなことにその突風は、時間にして10秒くらいで治まり、やれ
やれと身体のこわばりを解き、胸をなでおろした。その直後、今度は猛烈な雨が轟音を伴って
降りだし、同時に雷による音と光がひっきりなしにとどろき強風が吹き荒れ始めた。今度は、
窓に近づき、外の様子を眺めたら、雨が真昼のような閃光の中でバケツの水を何十杯もいっ
ぺんにひっくり返したかと思うほどの状態で屋根をジャンプ台にして吹き出ていた。雷の光で、
外のまっ黒の世界が繰り返し、繰り返し真っ白になる光景をしばらくの間、眺めていた。
(後日談であるが、雨のスクリーンの中を雷の光が下から上に登っていたとの話もある。)
翌朝、近所の屋根を見ると瓦が飛び散るなどの被害が出ていたが、実際には、もっとひどく、
屋根や瓦が飛んだり、塀やベランダが崩れたり、吹き飛ばされた物が家の壁に突き刺さった
りと大きな被害が出ていて、突風が走り去った後の夜中から消防団がでて活躍したということ
であった。朝には、被害地域周辺を消防団が見回り、住民が散乱物を片づけたりとあわただし
く、テレビのニュースでも朝、昼の地域版と夜の全国版で被害状況を報道した。
7月20日の新聞をみると、町道をはさんで住宅や商店が密集した地域の30戸が被害を受け、
原因はダウンバースト(強い下降気流)ではないかとの記事が出ていた。実際に現地を見ると
被害範囲は自分の目測によると、幅約2〜30m、長さ約3〜400m程度の長方形の中(我が家
は運良くその範囲の一番東側の少し外であった。)に集中しており、なぎ倒された稲や草の方向
からして、風の塊は南西から北東に進んでいったと推測できる。被害が発生した地域の西端から
さらに1km南西(この間はほとんど田んぼである。)のところに我が家の畑があり、ここのキウイの
木や6本の支柱がすべて北東より若干北方向になぎ倒されており、さらに2〜3km南の農業用ハ
ウスにも被害が出たとのことである。被害の出た一番南当たりから、突風が吹き始め、回転気流を
伴い、住宅密集地域で一番ひどくなったのではないだろうか。
竜巻は、それを発生させる積雲や雷雲といった積乱雲による上昇気流と雲の回転に伴って発生
するという。素人考えではあるが、一定方向だけへの被害状況や蒸し暑かったことからして、下降
気流ではなく、上昇気流である竜巻の可能性もあると思うのだが、いずれにしても、音を聞いただ
けであるがあれだけの突風は滅多に体験できるものではない。
真夜中に、想像の動物である竜が空に駆け上がりながら、猛烈な風、雨、雷を降り巻いていったと
空想するだけでロマンチックになるが、被害にあった家々はそれどころではなく、ほんの小さな一瞬の
気象現象ではあったが、自然の激しさをかいま見た思いである。
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