セントラル王国の最高指揮官






「だーかーら!!俺らはカルナの仲間(だった)って言ってんじゃん!!」

「女王様をカルナ呼ばわりするとは無礼者めがッ!」

セントラル城門前。

そこでシオンとセントラル城兵との壮絶な口論が繰り広げられていた。

なんとかセントラル王国へ着いたものの、城へそう易々と入れてはくれない。

シオン達一行はあっさりと足止めをくらって、こうして説得を試みてるのではあった。

「じゃあカルナに確認とってくれよ!そしたら分かるだろ」

「女王様への謁見は只今認められていない!…第一、お前達のような

薄汚い輩が女王様と知り合いなはずがないだろう!」

城兵のその一言に、シオンの一歩後ろでやりとりを見守っていた一同に火がついた。

「シオン、こんな奴に時間をとられるのはもったいない。…燃やすぞ」

「いっそのことモンスターにでも襲わせて…」

「頭ぶち抜いちゃえ☆」

女性陣の凄まじいオーラが感じ取れる。

「まぁまぁ、みんな落ち着いてよ」

それを宥めながらアルミオンは、城兵の前に立った。

「あんまり面倒なことは起こしたくなかったんだけど…しょうがないよね」

すっと城兵の目の前に右手をかざすと、城兵は力なく地面に倒れこんだ。

「アルミオン…もしかして…殺しちゃったのか?」

足元で倒れてぴくりとも動かない城兵。シオンは恐る恐る尋ねた。

「いいや。ちょっと眠ってもらっただけだよ。さ、行こうか」

大きな鉄製の城門を簡単に開き、平然と入っていく彼。

悠然と聳えるセントラル城に少し臆しながらもシオンも城内へと侵入した。

貴族の屋敷にも入ることなんてなく、城なんてもってのほか。

だが、こんな高貴な雰囲気に浸る間もなく、レッドカーペットを駆け抜ける。

途中、何人かのメイドに出会ったが無視して通り抜ける。

「カルナのいる部屋ってどこだよー!?」

これだけ広ければ、自分達が今どこにいるのかさえ確認できないのだが。

シオンはやけくそに叫ぶように言った。

「私が知るわけないだろう!!」とフィーナ。

「もういっそのこと、捕まったほうが早いんじゃないですか?」とリコリス。

「あ、あれじゃない!?あの正面の大きな扉!」

メルが一際大きい正面の扉を指差した。



バンッ



そのままの勢いでシオン達はそのドアに突っ込んでいった。

ドタっと豪快な音をたてて地面に倒れこむシオン。

「いててー…」



「あら?シオン?それからフィーナじゃありませんの?」



シオンの前に、長いドレスを見にまとった女性が立つ。カルナだ。

「カルナ…!?よぉ、久しぶり…」

顔をあげ、にっと笑うシオン。

「本当!…お二人とも変わりなさそうですわね」

瞳を輝かせるカルナ。それから嬉しそうににこりと微笑んだ。

「カルナ、お前の城ならもっと兵士のしつけをちゃんとしておけ」

「フィーナ、あなたも本当に相変らずですわね。…あら、新しい方達も。

アルミオンさん…もあなた達に同行してますのね」

リコリス、メル、それからアルミオンに視線を移していく。

「あの、初めましてカルナ様…!」

「わー…初めてみた…!ドレスとかすごいー」

緊張しつつはしゃぐリコリスとメルと、にこりと微笑むアルミオン。

「カルナ、ここにラフィスはいるか?」

感動の再会もそこそこに、フィーナが目的であるラフィスの話題にきりだす。

「ラフィス?それなら、執務施設に――…」



「カルナ様!」



カルナの言葉を遮り、シオン達が突っ込んできた扉から突如

一人の男性が飛び入ってきた。

片手に大きな斧を携えた若い男…シオンくらいの少年のようだった。

ただ、今までみてきた城の兵士とは違い、鎧や兜というものはつけておらず、

服にも美しい装飾が施されていた。

「カルナ様…ご無事なようですね」

カルナの無事を確認すると、その男性はシオン達にむけてまっすぐ

斧を差し向けた。

「貴様ら侵入者はもう完全に包囲されている…。ここに忍びこんだ重罪、

きっちり支払わせてやる。覚悟しろ」

「ちょ、ちょっと!その人達は――」

カルナの言葉を完全無視し、その男は飛び掛ってきた。

「うおッ!?」

間一髪、剣の鞘でその斧を受け止めたシオンだが、完全に力負けしている。

「シオンさん!!」

リコリスとメルが急いで戦闘準備を始めるが

「まて、リコリス、メル」

フィーナが彼女たちを手で制した。

「いい機会だ。シオン一人で戦わせてやれ」

それだけ言うとフィーナは、シオンの戦いを黙って見つめた。





重量級の斧とは思えない素早い動き。

そして力強い攻撃。それに圧倒されて、シオンはずっと攻撃できずにいた。

(なんなんだ、こいつ…。めちゃくちゃ強い…!)

一方的な強さ。正直、それほどの力はこれまでみたことがなかった。

「…背中がガラ空きだ」

いつの間にか背後を取られたシオンは、斧の風圧だけで後方に吹っ飛ばされた。

「うっ…!」

「終わりだ」

いまだ座りこんだままのシオンに、振り上げられた彼の斧。

(やばい…ッ!)

シオンは、とっさに真紅のマントをシオンと男との間にはためかせる。

シオンの視界に真紅が広がると同時に、男の視界も奪う。

勝負を左右したのはその一瞬の隙だった。

マントがひらりと地面に落ちる頃には、シオンの剣先は男の首筋に。

一歩でも動けば、それこそ男の首を狙える。





勝負がついたと見定めたフィーナは、シオンとその男に歩みよってきた。

「…久しぶりだな。ラフィス」

フィーナはシオンが剣を向けている男をまっすぐ見据えていた。

「貴様は……フン。そうゆうことか」

男は息をつき、今もなお振り上げていた斧をゆっくりと下ろす。

それをみたシオンも気が抜けたように剣を下ろすのだが…

「へ?ラフィス?」

フィーナと男を見比べながら、間抜けな声を出した。

「そうですわ」

カルナも、ラフィス、それからシオンに近づいてきた。



「あなたが今戦った彼が、ラフィス・クロードノア。うちの最高指令官ですわ」




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