エピローグ



――シオン、今までほんとうにありがとうございました。これがきっと最後の夢見となるでしょう――



翌朝、シオンの家もとい村長の家に泊まっていた面々はそれぞれの場所へ帰る用意をしていた。

アルミオンに送ってもらいそれぞれ帰るというので、村の迷惑にならないよう村はずれで。

「もうちょっとゆっくりしていけばいいのになぁ」

寂しそうに眉をさげたシオンに、アルミオンは苦笑して唸る。

「うーん、確かにそうしたいけど僕もまだやることが残ってるしさ。お世話になった精霊にもご挨拶しないといけないんだ」

「私も親のやっていたモンスター牧場を再興させようと思ったんです」

「私はほら、村のこととかいろいろあるしね…。お兄ちゃんのサポートしなくちゃ」

「オレはもともと城の指揮官だ。ゆっくりしている暇などない」

リコリス、メル、ラフィスもそれぞれにすることがあるようだ。

「そっか。でも、いつでも遊びに来いよ!!」

シオンが言うと、ラフィス以外のみんなが笑顔でかえしてくれた。

「それじゃあそろそろ出発だね」

ぶわっとあたりに風が舞い、アルミオンの姿がいっぺんして真っ白いドラゴンと化す。

それに、器用に乗っていく3人。

「元気でね、シオンさん」

「また会いましょうね」

「私の村にも来てよね!」

「まぁせいぜい面倒はおこさないことだな」

アルミオン、リコリス、メル、ラフィス。アルミオンが翼を広げるとみんなの姿がだんだんと小さく遠くなっていく。

「じゃあなーー!!」

両手を思いっきりふり、見えなくなっていくみんなを見送ったあと寂しくなるなぁと誰にも聴こえないほどの声で呟いた。



「さて…と。オレは…」

シオンは踵をかえし、しっかりとした足取りで向かったのは真実の湖と呼ばれる場所…。

グレンとよく狩りをする森に佇むとても綺麗な湖。

初めて闇を見た場所…。

そして、初めてフィーナと出会った場所…。

脳裏に甦る思い出に顔をほころばせ、バシャバシャとためらうことなくその湖の中に足をすすめた。

冷たくて、心地いい水だった。深さもシオンの腰程度しかない。

ちょうどその湖の中心くらいにきたとき、足をとめた。腰にある剣を大事に抱え、ゆっくりとその手をはなす。

「じゃあな」

剣は重力に逆らうことなく、同心円をつくり、湖の底へと落ちてゆく。闇がもう現れないという真実を願って…。

剣はやがて底へとつき、眠るように横たわった。



シオンはしばらくそれを眺めていたが、

「おーい、シオン。何してるんだよ、こんなところで」

不意に後ろから声がきこえ、振り返る。グレンだ。

シオンは、湖から出ようとまた足を動かし、陸上に上る。マントを絞ると、大量の水が出てきた。

「うわっ、お前なにしてたの!?」

「なんでもない、なんでもない!さ、グレン。そろそろ帰ろう!!」

シオンはグレンの背中を押すように、村へと帰っていった。





神の島から一本の光…

それは竜の導き。

人はそれをみることもなく、伝説は伝説となった…

しかし、それは永遠に忘れられることのない語られ続けられる伝説である…


     


END


 戻る