7−5 中和反応
7−5−1 中和反応
中和反応とは「酸」と「塩基」が反応して、「塩」と「水」ができる反応のことです。 注意 「塩」は「えん」と読みます。「しお」と読まないように。
酸 + 塩基 → 塩 +(水)
例 H2SO4 + 2NaOH → Na2SO4 + 2H2O
HCl + NH3 → NH4Cl (このように水ができない場合もあります。)
少し詳しく考えます。
HCl + NaOH → NaCl + H2O
この反応をイオン式で示すと、
( H+ + Cl−) + ( Na+ + OH−)→ ( Na+ + Cl− ) + H2O
となります。
反応の前後で Cl− と Na+ は変化していません。
変化したのは H+ + OH− → H2O
一般に「中和反応」とは酸からでる水素イオンと塩基からでる水酸化物イオンが反応して、水ができる反応と定義されます。
7−5−2 中和滴定
酸からでる水素イオンと塩基からでる水酸化物イオンが過不足無く反応するためには、次の関係が成立する必要があります。
酸のモル濃度×価数×体積=塩基のモル濃度×価数×体積 重要公式
教科書の公式には、この公式が文字式で書かれており、1000で割った分数の形が書いてあります。両辺の分母に1000があるので、この数は省略してもよいのではないかと考える方も多いと思います。その理由はこの公式に使用されている単位を考える必要があるのです。
モル濃度の単位は モル/リットル( mol/l)です。
体積の単位は普通 ミリリットル (ml) です。
したがって体積の単位を リットル( l ) に揃えるために、体積の数値を1000で割る必要があるのです。公式の分母の 1000 を省略してはいけません。
7−5−3 中和滴定で使用する器具と指示薬
メスフラスコ 定められた濃度の溶液をつくるために使用する。
10ml 100ml 250ml 500ml 1000ml などがある。
ホールピペット 定られた体積の溶液を吸い上げて採取するために使用する。
10ml がよく使用される。
ビュレット 反応に必要な溶液の体積を求めるために使用する。
25ml 50ml 100ml がよく使用される。
器具の形・使用方法をよく覚えるように。
指示薬
フェノールフタレイン 変色域 PH8.0 無色 − PH9.8紅 アルカリ性側で変色
メチルオレンジ 変色域 PH3.1赤 − pH4.4橙黄 酸性側で変色
7−5−4 滴定曲線
中和の操作をするとき加えた酸(または塩基)の体積とPHの変化の関係を滴定曲線という。特徴は中和点でPHが大きく変化することである。
第1図 濃度が0.1mol/lの1価の強酸(電離度を1とする)10mlに、
濃度が0.1mol/lの1価の強塩基(電離度を1とする)を加えたときで、
強酸の水素イオン濃度は [H+]=0.1×1 =10-1 なのでPH=1 である。
指示薬はメチルオレンジ、フェノーメフタレインのどちらを用いても中和点を判断することができる。
第2図は濃度が0.1mol/lの1価の強酸(電離度を1とする)10mlに、
濃度が0.1mol/lの1価の弱塩基(電離度を0.01とする)を加えたときで、
指示薬はメチルオレンジを用いて中和点を判断する。
第3図は濃度が0.1mol/lの1価の弱酸(電離度を0.01とする)10mlに、
濃度が0.1mol/lの1価の強塩基(電離度を1とする)を加えたときで、
弱酸の水素イオン濃度は [H+]=0.1×0.01 =10-3 なのでPH=3 である。
指示薬はフェノーメフタレインを用いて中和点を判断する。
注意 強酸−弱塩基の組み合わせのときの中和点は、PHが酸性側であり、
弱酸−強塩基の組み合わせのときの中和点は、PHがアルカリ側である。、
「中性」と「中和」とは意味が異なることに留意してほしい。