8−4 電池
8−4−1電池の基本
電池は物質のもっている化学エネルギーを、電気エネルギーに変換するものである。
基本構造はイオン化傾向の大きさの異なる金属板を、電解質を溶かした溶液に離して浸したものである。(電解質:水に溶けてイオンに分かれる物質で、酸・塩基・塩)
負極(-) イオン化傾向の大きい金属板:金属は陽イオンとなって溶液に溶け、極板には電子が貯まってくる。この変化は酸化反応である。
正極(+) 溶液中の陽イオンが極板に移動し、極板中の電子と結合する。この変化は還元反応である。
両極板を導線で結ぶと、電子e- は負極から正極に移動する。
しかし普通は正の電気をもった粒子 i が電子と反対方向に移動するように考える。
 
8−4−2 ボルタの電池
最も構造の簡単な基本的電池である。
負極(亜鉛)Zn → Zn2+ + 2e-
正極(銅)H+ + e- → H
電解液 希硫酸
起電力 1.1V

この電池は実用にならない。
理由1 2H → H2

 この水素ガスが電極を覆い、新しいH+ が電極に触れることが妨げられる。(現在の高校で使用されている教科書にはこれだけしか記述してない。)

 

理由2 H → H+ + e-

 銅電極上では、銅と水素とでは水素の方イオン化傾向が大きいので、上記のような逆反応が起きる。このとき発生する逆起電力は0.337Vである。そのため寿命は数秒である。この現象を分極という。

分極の現象を除くために、酸化剤を加えて水素を除くと寿命が長くなる。この酸化剤を減極剤という。

 
8−4−3 ダニエルの電池
負極(亜鉛)Zn → Zn2+ + 2e- 電解液 硫酸亜鉛
仕切板 素焼きの板
正極(銅)Cu2+ + 2e- → Cu  電解液 硫酸銅
起電力 1.1V
分極の現象が起きないので寿命が長い。
 
8−4−4 乾電池         
負極(亜鉛)Zn → Zn2+ + 2e-
正極(黒鉛C:酸化マンガン(W)MnO2)反応は複雑である。
電解液 塩化アンモニウム NH4Cl
          
        
減極剤 酸化マンガン(W) MnO2
起電力 1.5V
実用電池として広く使用されている。
 
8−4−5 一次電池と二次電池
 一次電池 放電して反応物質がなくなると、再び使用できない電池をいう。
 ボルタ、ダニエル、乾電池等は一次電池である。
 余談 乾電池を充電して使うと経済的だと広告して、売られている充電器があるが、乾電池は充電できない。ご注意
 二次電池 充電により繰り返して使用できる電池を二次電池という。鉛蓄電池はその代表である。
  実用電池には多くの種類があり、性能特性も異なる。使用目的により様々な形状をしたものが使用されている。
 
8−4−6 鉛蓄電池
 二次電池の代表的なものである。入試問題にも良く出題されるの良く理解しよう。
  放電のとき
負極(鉛) Pb + SO42- → PbSO4 + 2e-
正極(酸化鉛(W)) PbO2 + 4H+ + SO42- + 2e- → PbSO4 + 2H2O
電解液 希硫酸
起電力 約2.1V
放電により電解液中の硫酸が少なくなり、電極はどちらも硫酸鉛(U)に変化し、水が生成するので、電解液の密度は小さくなる。
 
 
充電のとき
 放電により電圧が1.8Vまで低くなると、充電する必要がある。
 充電は外部電源から、放電のときと逆に電流を流す。正極から電流を送り込み、負極から電流を取り出すように接続する。
負極(硫酸鉛(U)) PbSO4 + 2e- → Pb + SO42-
正極(硫酸鉛(U)) PbSO4 + 2H2O → PbO2 + SO42- + 4H+ + 2e-
  充電すると水が消費され、硫酸が生成するので、電解液の密度は大きくなる。
充電・放電の化学反応式をまとめると次のようになる。
 Pb(負極) + PbO2(正極) + 2H2SO4 → ← 2PbSO4 (両極) + 2H2O
 右向きが放電、左向きが充電を表している。
 
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