8−8 酸化剤と還元剤の雑談
 
教科書の酸化剤と還元剤の例を見ると、どの教科書もH+ の授受により説明してあります。
 例 酸化剤 H2O2 + 2H+ + 2e- → 2H2O (還元反応)
 還元剤から2H+ と 2e-を受け取る。
   還元剤 H2S → S + 2H+ + 2e- (酸化反応)
 酸化剤に2H+ + 2e- を与える。
 
しかしこの反応をO2- の授受により説明しても良いのです。
上の例で説明します。
  酸化剤 H2O2 + 2e- → H2O + O2-  (還元反応)
還元剤から2e- を受け取り、O2-  を与える。
   還元剤 H2S + O2- → S + H2O + 2e- (酸化反応)
酸化剤からO2- を受け取り、2e- を与える。
 
 今、銅と希硝酸の反応を考えます。
   酸化剤 HNO3 + 3H+ + 3e- → NO + 2H2O (1)  (還元反応)
   ところが酸化される銅にはH+ がないので、考えが進みません。
   しかし、ここで次のように考えます。
   Cu → Cu2+ + 2e- (2)  (酸化反応)
   Cu2+ + 2HNO3 →Cu(NO3 )2 + 2H+ (3)
   (1)(2)(3)の式の係数を揃えてまとめると
   3Cu + 8HNO3→ 3Cu(NO3 )2 + 2NO + 4H2O
この反応は複雑なので、毎年入試問題に出てきます。
 
   ここで考えを変えて酸素の動きで式をつくります。
     2 HNO3 +6e- → 2NO + H2O + 3O2- (1) (還元反応)
この O2- が Cu と結合しCuO(酸化銅(U))ができます。
10円硬貨の少し黒っぽい色は、空気中の酸素と反応してできた、CuOの色です。
   Cu + O2-  CuO + 2e-  (酸化反応)
  (1)とe- の数を合わせるため 3倍します。
   3Cu + 3O2- → 3CuO + 6e-  (2)
一般に金属酸化物は酸と良く反応します。
   CuO + 2HNO3 → Cu(NO3)2 + H2O
  (2)とCuO数を合わせるため 3倍します。
   3CuO + 6HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 3H2O  (3)
  (1)(2)(3)を合わせると
    3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O

となります。

如何ですか。
 
金属のイオン化傾向のところで説明してありますが、Cu,Hg,Ag は水素よりイオン化傾向が小さいので、酸とは反応しません。しかし酸化力のある酸とは反応します。酸化力のある酸とは 濃硝酸、希硝酸、熱濃硫酸です。念のために確認しますが、塩酸は強酸ですが、酸化力はありません。これらの酸が、どのように酸化剤として働くか、以下に記しておきます。銅、銀とどのように反応するか考えて下さい。
 
  濃硝酸 2HNO3 + 2e- → 2NO2 + H2O + O2-
  希硝酸 2HNO3 + 6e- → 2NO + H2O + 3O2-
   熱濃硫酸H2SO4 + 2e- → SO2 + H2O + O2-
 
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