9−3−5 その他の遷移元素 銀、クロム、マンガン
Ag silver 原子価 +1
文字通り銀白色に輝く金属で、美しく、酸化しにくいので貨幣や装飾品に古くから用いられてきた。元素名は銀を意味するラテン語argentからとられている。
 
性質 ・展性延性大 1gの銀は数Kmの細線にのばすことができる。
   ・電気抵抗小 電気抵抗最小
   ・酸化力のある硝酸、熱濃硫酸と反応する。
   ・H2Sにより黒色のAg2Sを生じる。
用途 装飾品、電気接点、鏡
 
主な化合物
  ・硝酸銀 AgNO3
   性質 無色板状の結晶、水に可溶、
  ・ハロゲン化物は水に不溶(フッ化銀は可溶)。光により分解する。
   AgCl(白)、AgBr(淡黄)、AgI(黄)
  用途 写真の感光剤
銀イオンの反応(重要)
  アルカリ(NaOH,NH3)により褐色の酸化銀の沈殿が生成する。
  2Ag+ + 2OH- → Ag2O + H2O
  さらにアンモニアを加えると無色の錯イオンが生成して溶ける。
  2Ag2O + 4NH3 + H2O → 2[Ag(NH3)2]+ + OH-
            ジアンミン銀(T)イオン
 
女性へ
硫化水素H2Sがでている温泉地などに出かけるとき、銀の指輪やネックレスなどの装飾品を身につけていると、表面の銀が黒色の硫化銀に変化する。この硫化銀を落とすのは困難。温泉地に出かけるときの装飾品は金か白金にするか、
何も身につけないか。貴女はどれを選ぶ。??
 
 
クロム Cr chromium 原子価 +2, +3, +6
フランスのポーケランが1797年に得ている。この元素の化合物がいろいろの色を示すので、「色」を意味するギリシャ語のKhromaにちなんでつけられた。
合金によく使用されている。
 
主な化合物
クロム酸カリウム K2CrO4
性質 ・黄色の結晶 ・水によく溶ける。 ・酸化剤
   ・鉛イオンと反応して、黄色の沈殿を生じる。黄色顔料
    Pb2+ + CrO42- → PbCrO4
   ・酸性溶液にすると二クロム酸イオンに変化する。
    2CrO42- + 2H+ → Cr2O72- + H2O
 
二クロム酸カリウム K2Cr2O7
性質 ・橙赤色の結晶 ・水によく溶ける。
   ・強酸化剤
    Cr2O72- + 14H+ + 6e- → 2Cr3+ + 7H2O
     橙赤色         緑色
    Crの酸化数の変化に注目 +6 → +3
   ・塩基性溶液にするとクロム酸イオンに変化する。
    Cr2O72- + 2OH- → 2CrO42- + H2O
    Crの酸化数の変化は変化していないことに注目
注意
・クロム酸イオンと二クロム酸カリウムの化学式はよく似ているので、正確に覚えよう。
・6価のくロムは毒性が強いので、実験に使った後の廃液は、下水にそのまま流さないようにしよう。
 
 
マンガン Mn manganese 原子価 +2, +4, +6, +7
スウェーデンが1774年に発見している。「磁石」を意味するラテン語のmagnes
または「浄化」を意味するギリシャ語によるといわれている。
 
主な化合物
酸化マンガン(W) MnO2
性質 ・黒色の粉末 ・水によく溶ける。
   ・触媒として過酸化水素または塩素酸カリウムに加えると酸素を発生する。
    2H2O2 → 2H2O + O2
    2KClO3 → 2KCl + O2
注意 触媒は化学反応の速さを促進する物質で、触媒自身は変化しない。
  過酸化水素に酸化マンガン(W)を加えたときの化学反応式を求められたとき
 2H2O2 + MnO2  と記したらだめです。
   ・酸化剤として
   4HCl + MnO2 → MnCl2 + 2H2O + Cl2
 
用途 乾電池の電極
 
過マンガン酸カリウム KMnO4
性質 ・黒紫色の針状結晶 ・強酸化剤
  MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O
  黒紫色        桃色
MnO4-を含む水溶液の色は濃度にもよりますが、フェノールフタレインの色とよく似ている。またMn2+を含む水溶液の色は非常に薄く、ほとんど無色に見える。
 
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