トルベツコイの音韻論は、それ以前のボードアン・ド・クルトネとクルシェフスキ、スウィート、パッシー、ジョ−ンズ、 シチェルバらの音韻論と比較して、はるかに体系的な思考と科学的な方法に立脚しており、ソシュール後の一般言語学、 すなわち言語構造の共時論に具体的な研究対象と、その方法を与える役割を果たした。音素論としては不徹底な形態音韻論の 立場にとどまったこと、二項対立の論理的な枠組みや、通時音韻論における目的論的立場の主張に先験論への傾斜が認められることなど、 当初から批判を受けた点はあったにせよ、1940年代から50年代の世界的な音韻論研究の発展に、トルベツコイの音韻論が 決定的な影響を与えたことは、多くの学史的著作の指摘するところである。
〜サピア・ウォーフの仮説〜
言語はそれぞれ独自の構造を持っており、その言語構造は、その言語を母語とする話者の思考や認識に影響を及ぼす。あるいは思考や認識を決定する。という仮説。言語相対論とも言う。