万葉集 巻第14
#[番号]14/3349
#[番号]14/3350
#[番号]14/3350S
#[番号]14/3351
#[番号]14/3352
#[番号]14/3353
#[番号]14/3354
#[番号]14/3355
#[番号]14/3356
#[番号]14/3357
#[番号]14/3358
#[番号]14/3358S1
#[番号]14/3358S2
#[番号]14/3359
#[番号]14/3360
#[番号]14/3360S
#[番号]14/3361
#[番号]14/3362
#[番号]14/3362S
#[番号]14/3363
#[番号]14/3364
#[番号]14/3364S
#[番号]14/3365
#[番号]14/3366
#[番号]14/3367
#[番号]14/3368
#[番号]14/3369
#[番号]14/3370
#[番号]14/3371
#[番号]14/3372
#[番号]14/3373
#[番号]14/3374
#[番号]14/3375
#[番号]14/3376
#[番号]14/3376S
#[番号]14/3377
#[番号]14/3378
#[番号]14/3379
#[番号]14/3380
#[番号]14/3381
#[番号]14/3382
#[番号]14/3383
#[番号]14/3384
#[番号]14/3385
#[番号]14/3386
#[番号]14/3387
#[番号]14/3388
#[番号]14/3389
#[番号]14/3390
#[番号]14/3391
#[番号]14/3392
#[番号]14/3393
#[番号]14/3394
#[番号]14/3395
#[番号]14/3396
#[番号]14/3397
#[番号]14/3398
#[番号]14/3399
#[番号]14/3400
#[番号]14/3401
#[番号]14/3402
#[番号]14/3403
#[番号]14/3404
#[番号]14/3405
#[番号]14/3405S
#[番号]14/3406
#[番号]14/3407
#[番号]14/3408
#[番号]14/3409
#[番号]14/3410
#[番号]14/3411
#[番号]14/3412
#[番号]14/3413
#[番号]14/3414
#[番号]14/3415
#[番号]14/3416
#[番号]14/3417
#[番号]14/3418
#[番号]14/3419
#[番号]14/3348
#[題詞]東歌
#[原文]奈都素妣久 宇奈加美我多能 於伎都渚尓 布袮波等<杼>米牟 佐欲布氣尓家里
#[訓読]夏麻引く海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜更けにけり
#[仮名],なつそびく,うなかみがたの,おきつすに,ふねはとどめむ,さよふけにけり
#[左注]右一首上総國歌
#[校異]抒 -> 杼 [類][古][京]
#[KW],東歌,千葉県,枕詞,市原市,地名
#[訓異]
#[大意]夏麻を引き抜く畝ではないが、海上潟の沖の州浜に船は停泊しよう。夜も更けたことだ
#{語釈]
なつそびく 夏の麻を引き抜く畝から「うな」にかかる枕詞
海上潟 千葉県市原市
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可豆思加乃 麻萬能宇良<未>乎 許具布祢能 布奈妣等佐和久 奈美多都良思母
#[訓読]葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも
#[仮名],かづしかの,ままのうらみを,こぐふねの,ふなびとさわく,なみたつらしも
#[左注]右一首下総國歌
#[校異]末 -> 未 [万葉集古義]
#[KW],東歌,千葉県,地名,葛飾区,市原市,景物
#[訓異]
#[大意]葛飾の真間の浦のめぐりを漕ぐ船の船頭が騒ぎ立てる。波が立っているらしい
#{語釈]
葛飾の真間の浦廻 千葉県東葛飾郡 東京都葛飾区
#[説明]
類歌
07/1228H01風早の三穂の浦廻を漕ぐ舟の舟人騒く波立つらしも
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢乃 尓比具波麻欲能 伎奴波安礼杼 伎美我美家思志 安夜尓伎保思母
#[訓読]筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣しあやに着欲しも
#[仮名],つくはねの,にひぐはまよの,きぬはあれど,きみがみけしし,あやにきほしも
#[左注]或本歌曰 多良知祢能 又云 安麻多伎保思母 / (右二首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,茨城県,筑波山,地名,,恋愛,新婚,婚姻
#[訓異]
#[大意]筑波嶺の新しい桑で育った繭の衣はあるが、あなたの衣をやたらと着たいものだ
#{語釈]
筑波嶺 茨城県筑波郡 筑波山
あやに 自分でも不思議に思うほど程度の甚だしい様子
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰 又云
#[原文]多良知祢能 安麻多伎保思母
#[訓読]たらちねの あまた着欲しも
#[仮名]たらちねの,あまたきほしも
#[左注](右二首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,茨城県,異伝,筑波山,新婚,恋愛
#[訓異]
#[大意]母が世話をして新しい桑で育った繭の衣はあるが、あなたの衣を非常に着たいものだ
#{語釈]
たらちねの 普通、母の枕詞。ここは、母自身の意味。
母が世話をした新しい桑で育った繭の意味
あまた 甚だしく、非常に
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢尓 由伎可母布良留 伊奈乎可母 加奈思吉兒呂我 尓努保佐流可母
#[訓読]筑波嶺に雪かも降らるいなをかも愛しき子ろが布乾さるかも
#[仮名],つくはねに,ゆきかもふらる,いなをかも,かなしきころが,にのほさるかも
#[左注]右二首常陸國歌
#[校異]
#[KW],東歌,茨城県,筑波山,地名,恋情,景物
#[訓異]
#[大意]筑波嶺に雪が降っているのだろうか。そうではないのだろうか。愛しいあの子が布を乾しているのだろうか
#{語釈]
降らる 降れる 完了
乾さる 乾せる 完了
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]信濃奈流 須我能安良能尓 保登等藝須 奈久許恵伎氣<婆> 登伎須疑尓家里
#[訓読]信濃なる須我の荒野に霍公鳥鳴く声聞けば時過ぎにけり
#[仮名],しなぬなる,すがのあらのに,ほととぎす,なくこゑきけば,ときすぎにけり
#[左注]右一首信濃國歌
#[校異]波 -> 婆 [紀][細]
#[KW],東歌,長野県,地名,真田町,菅平,動物,別離,農事,女歌
#[訓異]
#[大意]信濃にある菅の荒野にほととぎすの鳴く声を聞くと時が過ぎたことだ
#{語釈]
須我の荒野 大日本地名辞書 梓川と楢井川の間の荒野
松本市の西南、今井、和田あたり
古義 信濃地名考 伊那郡阿智川に菅野村
田子檀 菅平のこと
時過ぎにけり 伊藤博 都の官人が信濃までやってきて、もうほととぎすの鳴く季節になったと慕ぶ望郷の歌
代匠紀、折口信夫 ほととぎすが鳴くと行わなければならない農事を思い出し、その時期が過ぎてしまったといったもの
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]相聞
#[原文]阿良多麻能 伎倍乃波也之尓 奈乎多弖天 由伎可都麻思自 移乎佐伎太多尼
#[訓読]あらたまの伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ寐を先立たね
#[仮名],あらたまの,きへのはやしに,なをたてて,ゆきかつましじ,いをさきだたね
#[左注](右二首遠江國歌)
#[校異]伎 [類][細](塙) 吉
#[KW],東歌,相聞,静岡県,枕詞,地名,浜名市,歌謡,歌垣,民謡,恋愛
#[訓異]
#[大意]あらたまの伎倍の林にあなたを立たせたまま通り過ぎて行くことはとても出来ない。先にあなたと寝よう。
#{語釈]
あらたまの 遠江国麁玉郡 静岡県浜松市北部、浜北市あたり
伎倍の林 所在未詳
#[説明]
歌垣の歌か、伊藤博 労働歌か 正述心緒
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伎倍比等乃 萬太良夫須麻尓 和多佐波太 伊利奈麻之母乃 伊毛我乎杼許尓
#[訓読]伎倍人のまだら衾に綿さはだ入りなましもの妹が小床に
#[仮名],きへひとの,まだらぶすまに,わたさはだ,いりなましもの,いもがをどこに
#[左注]右二首遠江國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,地名,浜名市,恋愛,歌垣,歌謡,民謡
#[訓異]
#[大意]伎倍の人々のまだらな色の布団に綿がたくさん入っているように、入ってしまおうものを。妹の寝床に
#{語釈]
まだら衾 まだらに染めた懸け布団
さはだ入りなましもの たくさん入ってもしまおうものを
完了「ぬ」の未然形「な」に反実仮想の「まし」がついたもの
#[説明]
上の歌に対して寄物陳思
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安麻乃波良 不自能之婆夜麻 己能久礼能 等伎由都利奈波 阿波受可母安良牟
#[訓読]天の原富士の柴山この暗の時ゆつりなば逢はずかもあらむ
#[仮名],あまのはら,ふじのしばやま,このくれの,ときゆつりなば,あはずかもあらむ
#[左注](右五首駿河國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,歌垣,歌謡,民謡,恋愛
#[訓異]
#[大意]天の原にそびえる富士山の麓の雑木林の暗がりの時節が過ぎていったならば逢うことの機会がなくなるだろうか。
#{語釈]
富士の柴山 富士山の麓の雑木林
この暗 新緑で木の下が暗くなるのと、日が暮れるのとを懸けた
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]不盡能祢乃 伊夜等保奈我伎 夜麻治乎毛 伊母我理登倍婆 氣尓餘婆受吉奴
#[訓読]富士の嶺のいや遠長き山道をも妹がりとへばけによばず来ぬ
#[仮名],ふじのねの,いやとほながき,やまぢをも,いもがりとへば,けによばずきぬ
#[左注](右五首駿河國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋愛
#[訓異]
#[大意]富士の嶺のますます遠く長い山道をも妹のもとへと思えば、息を切らずにやってきたことだ
#{語釈]
いや遠長き めっぽう遠く長い
とへば と言へば
けによばず 気呻吟(によ)ばず うめき声を上げずに 息を切らさずに
によふ 霊異記 呻 によふ 名義抄 吟 によふ、なげく
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可須美為流 布時能夜麻備尓 和我伎奈婆 伊豆知武吉弖加 伊毛我奈氣可牟
#[訓読]霞居る富士の山びに我が来なばいづち向きてか妹が嘆かむ
#[仮名],かすみゐる,ふじのやまびに,わがきなば,いづちむきてか,いもがなげかむ
#[左注](右五首駿河國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,別離,後朝
#[訓異]
#[大意]霞が立ちこめている富士の山辺に自分が来たならば、どの方向を向いて妹が嘆くだろうか
#{語釈]
#[説明]
旅に出た夫が富士山付近を通過することを思って作った歌
相模、甲斐あたり
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 <古>布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登
#[訓読]さ寝らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと
#[仮名],さぬらくは,たまのをばかり,こふらくは,ふじのたかねの,なるさはのごと
#[左注]或本歌曰 麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与 一本歌曰 阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 / (右五首駿河國歌)
#[校異]右 -> 古 [西(訂正右書)][類][紀][温] / 久波 [細](塙) 久
#[KW],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,歌謡,民謡,歌垣
#[訓異]
#[大意]寝るのは玉の緒のようにほんのちょっと。恋い思うのは富士の高嶺の鳴沢のように自分の心は激しく鳴るよ
#{語釈]
玉の緒 長い意味12/3082 にも用いるが短い意味にも使われる。ここでは短い意味
12/3086H01なかなかに人とあらずは桑子にもならましものを玉の緒ばかり
なまじっか人でいずに蚕にもなったらよかろうに。短い間でも
鳴沢 高く音を立てる渓谷 富士西部の大沢など崩壊沢 岩石が崩れ落ちる大きな音
代匠紀 此の山の頂に大なる沢あり。山のもゆる火の気とその沢の水と相克して常にわきかえりなりひびくゆへになるさはといふ
たとえの意味 代匠紀 なりやむ期もなければ玉の緒の短きに対して云へり
考 この鳴沢のおびただしくわきかへり鳴を想いのわきかえるにたとふるか。
音がはげしいように想いがはげしいことか
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰
#[原文]麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与
#[訓読]ま愛しみ寝らくはしけらくさ鳴らくは伊豆の高嶺の鳴沢なすよ
#[仮名]まかなしみ,ぬらくはしけらく,さならくは,いづのたかねの,なるさはなすよ
#[左注](右五首駿河國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,地名,伊豆,天城山,うわさ,人目,恋愛,歌垣,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]愛しく思って寝ることは愛しく(しょっちゅう)、噂にとどろくことは伊豆の高い山の嶺の鳴沢のようだよ
#{語釈]
ぬらくはしけらく 寝らく愛しけらく
細、宮 「波」なし。 及(し)けらく しょっちゅう
伊豆の高嶺 天城山か、伊豆から見える富士山か
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]一本歌曰
#[原文]阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛
#[訓読]逢へらくは玉の緒しけや恋ふらくは富士の高嶺に降る雪なすも
#[仮名]あへらくは,たまのをしけや,こふらくは,ふじのたかねに,ふるゆきなすも
#[左注](右五首駿河國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,歌垣,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]逢うことは玉の緒に及ばない。恋い思うのは富士の高嶺に降る雪のように多く積もっていることだ
#{語釈]
玉の緒しけや 玉の緒のような長さには及ばない
しけ の如く、のように 及ぶ
全注釈 玉の緒の短いのにも及ばない
降る雪なすも 雪がいつも積もっているように、恋い思う気持ちはしきりに降り積もる
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]駿河能宇美 於思敝尓於布流 波麻都豆良 伊麻思乎多能美 波播尓多我比奴 [一云 於夜尓多我比奴]
#[訓読]駿河の海おし辺に生ふる浜つづら汝を頼み母に違ひぬ [一云 親に違ひぬ]
#[仮名],するがのうみ,おしへにおふる,はまつづら,いましをたのみ,ははにたがひぬ,[おやにたがひぬ]
#[左注]右五首駿河國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,駿河湾,地名,植物,恋情,異伝,歌謡,歌垣,民謡
#[訓異]
#[大意]駿河の海の磯部に生えている浜の蔓草が長く絶えないので頼みとできるように、あなたを頼みとして母の言いつけに背いてしまった
#{語釈]
おし辺 磯部
浜つづら 浜辺に生えている蔓草 長く絶えずにの意で頼るにかかる
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊豆乃宇美尓 多都思良奈美能 安里都追毛 都藝奈牟毛能乎 <美>太礼志米梅楊
#[訓読]伊豆の海に立つ白波のありつつも継ぎなむものを乱れしめめや
#[仮名],いづのうみに,たつしらなみの,ありつつも,つぎなむものを,みだれしめめや
#[左注]或本歌曰 之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武 / 右一首伊豆國歌
#[校異]<> -> 美 [西(右書)][類][紀][細]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,地名,伊豆,女歌,恋情,序詞
#[訓異]
#[大意]伊豆の海に立つ白波のように絶えずあるように、そのままにあって継いで行こうものなのに、心を乱れさせようか。
#{語釈]
乱れしめめや 乱れしむ めや
#[説明]
いつまでも続く鯉なのだから、心を乱れさせることはないの意
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰
#[原文]之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武
#[訓読]白雲の絶えつつも継がむと思へや乱れそめけむ
#[仮名],しらくもの,たえつつも,つがむともへや,みだれそめけむ
#[左注]右一首伊豆國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,静岡県,異伝,女歌,恋情,序詞
#[訓異]
#[大意]白雲のように途絶えながらもまた続けようと思うから、心が乱れ始めたのだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安思我良能 乎弖毛許乃母尓 佐須和奈乃 可奈流麻之豆美 許呂安礼比毛等久
#[訓読]足柄のをてもこのもにさすわなのかなるましづみ子ろ我れ紐解く
#[仮名],あしがらの,をてもこのもに,さすわなの,かなるましづみ,ころあれひもとく
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,地名,足柄,序詞,恋愛,狩猟,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]足柄のあちらこちらに張ってある罠が音を立てるように、かまびすしい時が静まってあの子と自分は紐を解くことだ
#{語釈]
をてもこのもに あちらこちらに 彼面(おちおも)此面(このおも)
さすわな 罠に獲物がかかって音が立つことから「かなる」にかかる序詞
かなるましづみ 20/4430
代匠紀 鹿鳴間沈なり。鹿が鳴いて寄ってくる間、狩人は静かにして待つことから言う
新考 かなる がなる、やかましい意味 夜が更けてかまびすしい人が寝静まっての意
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]相模祢乃 乎美祢見所久思 和須礼久流 伊毛我名欲妣弖 吾乎祢之奈久奈
#[訓読]相模嶺の小峰見そくし忘れ来る妹が名呼びて我を音し泣くな
#[仮名],さがむねの,をみねみそくし,わすれくる,いもがなよびて,あをねしなくな
#[左注]或本歌曰 武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流 / (右十二首相模國歌)
#[校異]所 [岩波大系](塙)(楓) 可 / <> -> 遊 [西(右書)][元][類][古][紀]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,地名,丹沢,別離,恋情,異伝
#[訓異]
#[大意]相模の嶺のその嶺を見捨てて忘れて来るのに妹の名前を呼んで、自分を泣かせるな
#{語釈]
見そくし 代匠紀 見過ごし
折口 遠く見やる、見はるかす
西宮一民 所は乙類 見過ごしの場合の退くは、甲類
見退く 背を向けて見捨てるようにする
大系 所は可の誤り 見隠くし 見てみないふりをする
我を音し泣くな 泣く 下二段使役動詞 泣かせるな
#[説明]
旅をしている男が、妹の名前を呼ばれて嘆いている歌
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰
#[原文]武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流
#[訓読]武蔵嶺の小峰見隠し忘れ行く君が名懸けて我を音し泣くる
#[仮名],むざしねの,をみねみかくし,わすれゆく,きみがなかけて,あをねしなくる
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,異伝,地名,別離,恋情
#[訓異]
#[大意]武蔵の嶺のあの嶺に背を向けて忘れていくあなたの名前を言葉に懸けて自分を泣かせることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]和我世古乎 夜麻登敝夜利弖 麻都之太須 安思我良夜麻乃 須疑乃木能末可
#[訓読]我が背子を大和へ遣りて待つしだす足柄山の杉の木の間か
#[仮名],わがせこを,やまとへやりて,まつしだす,あしがらやまの,すぎのこのまか
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,女歌,別離,悲別,地名,足柄,掛詞
#[訓異]
#[大意]我が背子を大和に出してやって待つ時の足柄山の杉の木の間なのか
#{語釈]
待つしだす 難解 全釈 待つ時(しだ)し
#[説明]
釈注 待つ折りしも私は松ならぬ足柄山の杉 過ぎの木の間なのか
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安思我良能 波(I)祢乃夜麻尓 安波麻吉弖 實登波奈礼留乎 阿波奈久毛安夜思
#[訓読]足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを粟無くもあやし
#[仮名],あしがらの,はこねのやまに,あはまきて,みとはなれるを,あはなくもあやし
#[左注]或本歌末句曰 波布久受能 比可波与利己祢 思多奈保那保尓 / (右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,箱根,地名,足柄,掛詞,植物,恋情,農事,民謡,歌謡,異伝
#[訓異]
#[大意]足柄の箱根の山に粟を蒔いて、実にもなっているのに逢わないのは怪しいことだ
#{語釈]
#[説明]
11/2641H01時守の打ち鳴す鼓数みみれば時にはなりぬ逢はなくもあやし
12/3076H01住吉の敷津の浦のなのりその名は告りてしを逢はなくも怪し
#[関連論文]
#[題詞]或本歌末句曰
#[原文]波布久受能 比可波与利己祢 思多奈保那保尓
#[訓読]延ふ葛の引かば寄り来ね下なほなほに
#[仮名],はふくずの,ひかばよりこね,したなほなほに
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,異伝,序詞,恋情,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]這っている葛を引くように誘ったならば寄ってきてくれよ。心すなおに
#{語釈]
下なほなほに 心すなおに
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可麻久良乃 美胡之能佐吉能 伊波久叡乃 伎美我久由倍伎 己許呂波母多自
#[訓読]鎌倉の見越しの崎の岩崩えの君が悔ゆべき心は持たじ
#[仮名],かまくらの,みごしのさきの,いはくえの,きみがくゆべき,こころはもたじ
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,地名,鎌倉,稲村が崎,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]鎌倉の見越しの崎の岩が崩れているようにあなたが後悔するような気持ちは持つまいよ
#{語釈]
見越しの崎 神奈川県鎌倉市稲村が崎 腰越
岩崩え 磯の岩が波に崩れている様子
#[説明]
類歌
03/0437H01妹も我れも清みの川の川岸の妹が悔ゆべき心は持たじ
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]麻可奈思美 佐祢尓和波由久 可麻久良能 美奈能瀬河泊尓 思保美都奈武賀
#[訓読]ま愛しみさ寝に我は行く鎌倉の水無瀬川に潮満つなむか
#[仮名],まかなしみ,さねにわはゆく,かまくらの,みなのせがはに,しほみつなむか
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]泊 [元][類][古] 伯
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,鎌倉,稲背川,地名,恋愛
#[訓異]
#[大意]かわいくて寝に自分は行く。鎌倉の水無瀬川に潮が満ちていることであろうか
#{語釈]
水無瀬川 みなのせがわ 大日本地名辞書 神奈川県鎌倉市 稲瀬川
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]母毛豆思麻 安之我良乎夫祢 安流吉於保美 目許曽可流良米 己許呂波毛倍杼
#[訓読]百づ島足柄小舟歩き多み目こそ離るらめ心は思へど
#[仮名],ももづしま,あしがらをぶね,あるきおほみ,めこそかるらめ,こころはもへど
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,足柄,女歌,恋情,皮肉,揶揄,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]多くの島を足柄小舟が行くように出歩く所が多いので、逢うことが離れているのだろう。心では思っているのだが。
#{語釈]
百づ島 多くの島を足柄小舟が行くように
目こそ離るらめ心は思へど 目は離れるだろう。心には思っているが。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]阿之我利能 刀比能可布知尓 伊豆流湯能 余尓母多欲良尓 故呂河伊波奈久尓
#[訓読]あしがりの土肥の河内に出づる湯のよにもたよらに子ろが言はなくに
#[仮名],あしがりの,とひのかふちに,いづるゆの,よにもたよらに,ころがいはなくに
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,湯河原町,地名,恋情,序詞
#[訓異]
#[大意]足柄の土肥の河内に出る温泉のように決してゆらいではあの子に言わないのに
#{語釈]
土肥の河内 地名辞書 神奈川県足柄下郡湯河原町
よにもたよらに 「よにも」ちっとも、けっして
「たよらに」ゆらいで安定しない様
#[説明]
不安を与えるようなことを言っていないのに、相手は心変わりの不安を言っているというか
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]阿之我利乃 麻萬能古須氣乃 須我麻久良 安是加麻可左武 許呂勢多麻久良
#[訓読]あしがりの麻万の小菅の菅枕あぜかまかさむ子ろせ手枕
#[仮名],あしがりの,ままのこすげの,すがまくら,あぜかまかさむ,ころせたまくら
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,地名,足柄,植物,民謡,歌垣,歌謡,口説き,恋愛
#[訓異]
#[大意]足柄のままの小菅の菅枕をどうして枕になさるのか。この子よ。しなさいよ。私の手枕を
#{語釈]
麻万の小菅 全釈 南足柄市壗下(まました)あたりか
新考 地形の一般名詞 断崖を示す
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安思我里乃 波故祢能祢呂乃 尓古具佐能 波奈都豆麻奈礼也 比母登可受祢牟
#[訓読]あしがりの箱根の嶺ろのにこ草の花つ妻なれや紐解かず寝む
#[仮名],あしがりの,はこねのねろの,にこぐさの,はなつつまなれや,ひもとかずねむ
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,箱根,植物,序詞,恋情,怨恨,地名
#[訓異]
#[大意]足柄の箱根の嶺の柔らかい草の花の妻であるのだったら紐も解かずに寝ようが、そうでないから紐を解いて寝ずにはいられない。
#{語釈]
にこ草 11/2762 和草 柔らかい草
花つ妻 ただ花だけの実態のない妻の意に用いている。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安思我良乃 美佐可加思古美 久毛利欲能 阿我志多婆倍乎 許知弖都流可<毛>
#[訓読]足柄のみ坂畏み曇り夜の我が下ばへをこち出つるかも
#[仮名],あしがらの,みさかかしこみ,くもりよの,あがしたばへを,こちでつるかも
#[左注](右十二首相模國歌)
#[校異]母 -> 毛 [元][類][古][細]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,足柄,恋情,うわさ,地名
#[訓異]
#[大意]足柄のみ坂が恐ろしくて、曇った夜ではないが自分の心の思いを言葉に出したことであるよ
#{語釈]
曇り夜の 曇った夜はものがはっきりと見えないので、「下ばへ」の枕詞
下ばへ 心の中で思っていること 9/1792
こち出つるかも 言出(こといで)。言葉に出したことだ
#[説明]
秘密をもったまま神の前を通り過ぎると祟りがあるという俗信がもとか。
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]相模治乃 余呂伎能波麻乃 麻奈胡奈須 兒良波可奈之久 於毛波流留可毛
#[訓読]相模道の余綾の浜の真砂なす子らは愛しく思はるるかも
#[仮名],さがむぢの,よろぎのはまの,まなごなす,こらはかなしく,おもはるるかも
#[左注]右十二首相模國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,神奈川県,大磯,地名,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]相模道の余綾の浜の砂のような美しいあの子は愛しく思われることだ
#{語釈]
余綾の浜 神奈川県小田原市国府津(小田原と平塚の間)
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎
#[訓読]多摩川にさらす手作りさらさらになにぞこの子のここだ愛しき
#[仮名],たまかはに,さらすてづくり,さらさらに,なにぞこのこの,ここだかなしき
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]泊 [元][古] 伯
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,多摩川,恋情,地名
#[訓異]
#[大意]多摩川にさらす手作りの布のようにさらにさらにどうしてこの子がひどくかわいいのだろうか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]武蔵野尓 宇良敝可多也伎 麻左弖尓毛 乃良奴伎美我名 宇良尓R尓家里
#[訓読]武蔵野に占部肩焼きまさでにも告らぬ君が名占に出にけり
#[仮名],むざしのに,うらへかたやき,まさでにも,のらぬきみがな,うらにでにけり
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,女歌,うわさ,人目,恋愛
#[訓異]
#[大意]武蔵野に占いをし肩を焼いたら、本当にも言葉には出ないあなたの名前が占いに出てしまったことだ
#{語釈]
占部 占いをする
肩焼き 鹿の肩の骨を焼いて占う。亀の甲羅を焼く
まさでにも告らぬ 本当に打ち明けていない
実際には言葉に出るはずもない(知られるはずのない)
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]武蔵野乃 乎具奇我吉藝志 多知和可礼 伊尓之与比欲利 世呂尓安波奈布与
#[訓読]武蔵野のをぐきが雉立ち別れ去にし宵より背ろに逢はなふよ
#[仮名],むざしのの,をぐきがきぎし,たちわかれ,いにしよひより,せろにあはなふよ
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,動物,序詞,女歌,悲別,恋情
#[訓異]
#[大意]武蔵野の山の洞穴にいる雉がどこかに行くように立ち別れて行った日からあの人には会わないことだ
#{語釈]
をぐきが雉 「を」接頭語、くきは「岫」。山の洞窟
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米
#[訓読]恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ
#[仮名],こひしけば,そでもふらむを,むざしのの,うけらがはなの,いろにづなゆめ
#[左注]或本歌曰 伊可尓思弖 古非波可伊毛尓 武蔵野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓R受安良牟 / (右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,植物,うわさ,人目,恋情,女歌
#[訓異]
#[大意]恋しいならば袖も振ろうものを。武蔵野のうけらの花のようなはっきりと色には出すなよ。決して。
#{語釈]
うけらが花 山野に自生する菊科の多年生草本。秋に白または紅の花。根は薬用。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰
#[原文]伊可尓思弖 古非波可伊毛尓 武蔵野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓R受安良牟
#[訓読]いかにして恋ひばか妹に武蔵野のうけらが花の色に出ずあらむ
#[仮名],いかにして,こひばかいもに,むざしのの,うけらがはなの,いろにでずあらむ
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,異伝,地名,植物,恋情,序詞
#[訓異]
#[大意]どのようにして恋い思ったら、妹に対して武蔵野のうけらの花のような色に出ないでいられようか
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]武蔵野乃 久佐波母呂武吉 可毛可久母 伎美我麻尓末尓 吾者余利尓思乎
#[訓読]武蔵野の草葉もろ向きかもかくも君がまにまに我は寄りにしを
#[仮名],むざしのの,くさはもろむき,かもかくも,きみがまにまに,わはよりにしを
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,女歌,怨恨,恋情,序詞
#[訓異]
#[大意]武蔵野の草葉があちらこちらに向いているように、ともかくもあなたの心のままに自分は寄ったものなのに
#{語釈]
#[説明]
相手の心変わりか浮気をなじっている
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊利麻治能 於保屋我波良能 伊波為都良 比可婆奴流々々 和尓奈多要曽祢
#[訓読]入間道の於保屋が原のいはゐつら引かばぬるぬる我にな絶えそね
#[仮名],いりまぢの,おほやがはらの,いはゐつら,ひかばぬるぬる,わになたえそね
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,地名,入間,植物,序詞,恋情,民謡,歌垣,歌謡
#[訓異]
#[大意]入間道の大家の原のいわゐ葛ではないが、引くとずるずると付いてきて自分とは途絶えてくれるなよ。
#{語釈]
入間道 和名抄 武蔵国入間郡大家 埼玉県入間郡
いはゐつら 未詳 蔓草の植物 すべりひゆ、じゅんさい、ねなしかずら等
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]和我世故乎 安杼可母伊波武 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 登吉奈伎母能乎
#[訓読]我が背子をあどかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを
#[仮名],わがせこを,あどかもいはむ,むざしのの,うけらがはなの,ときなきものを
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,植物,女歌,序詞
#[訓異]
#[大意]我が背子をどのように言おうか。武蔵野のうけらが花ではないが、時とはなく恋しいものだから。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]佐吉多萬能 津尓乎流布祢乃 可是乎伊多美 都奈波多由登毛 許登奈多延曽祢
#[訓読]埼玉の津に居る船の風をいたみ綱は絶ゆとも言な絶えそね
#[仮名],さきたまの,つにをるふねの,かぜをいたみ,つなはたゆとも,ことなたえそね
#[左注](右九首武蔵國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,地名,行田,序詞,恋情,女歌,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]埼玉の船着き場にいる船が風がひどいのでと綱は切れるとしても、二人の音信は絶えるなよ。
#{語釈]
埼玉の津 行田、羽生市のあたりの利根川の船着き場
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]奈都蘇妣久 宇奈比乎左之弖 等夫登利乃 伊多良武等曽与 阿我之多波倍思
#[訓読]夏麻引く宇奈比をさして飛ぶ鳥の至らむとぞよ我が下延へし
#[仮名],なつそびく,うなひをさして,とぶとりの,いたらむとぞよ,あがしたはへし
#[左注]右九首武蔵國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,枕詞,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]夏麻引くうなひを指して飛ぶ鳥のように、あなたの所に行き着こうと自分は密かに思っていることだ。
#{語釈]
夏麻引く 3348 夏の麻を引き抜く畝から「う」にかかる枕詞
宇奈比 地名と見られるが未詳
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]宇麻具多能 祢呂乃佐左葉能 都由思母能 奴礼弖和伎奈婆 汝者故布婆曽毛
#[訓読]馬来田の嶺ろの笹葉の露霜の濡れて我来なば汝は恋ふばぞも
#[仮名],うまぐたの,ねろのささはの,つゆしもの,ぬれてわきなば,なはこふばぞも
#[左注](右二首上総國歌)
#[校異]毛 [元][類] 母
#[KW],東歌,相聞,千葉県,木更津,地名,恋情,悲別
#[訓異]
#[大意]馬来田の嶺の笹の葉の露霜のように濡れて自分が来たならば、あなたは恋い思うことだろうよ
#{語釈]
馬来田 千葉県君津郡 木更津市 不明
露霜の濡れて 序の対応関係未詳 露霜のように自分が濡れる
注釈 露霜のように涙に濡れてやって来たならば
露霜のように袖が濡れる
恋ふばぞも 未詳 恋ひむぞもの意か
#[説明]
旅立つ男の歌か。
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]宇麻具多能 祢呂尓可久里為 可久太尓毛 久尓乃登保可婆 奈我目保里勢牟
#[訓読]馬来田の嶺ろに隠り居かくだにも国の遠かば汝が目欲りせむ
#[仮名],うまぐたの,ねろにかくりゐ,かくだにも,くにのとほかば,ながめほりせむ
#[左注]右二首上総國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,千葉県,地名,木更津,羈旅,恋情,望郷
#[訓異]
#[大意]馬来田の嶺に隠れているように、こんなにも国から遠くなったらあなたの目が欲しくなる(逢いたくなる)だろう。
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可都思加能 麻末能手兒奈乎 麻許登可聞 和礼尓余須等布 麻末乃弖胡奈乎
#[訓読]葛飾の真間の手児名をまことかも我れに寄すとふ真間の手児名を
#[仮名],かづしかの,ままのてごなを,まことかも,われによすとふ,ままのてごなを
#[左注](右四首下総國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,千葉県,地名,伝説,恋愛,民謡,歌謡
#[訓異]
#[大意]葛飾の真間の手児名をほんとうだろうか。自分に言い寄せるというよ。真間の手児名はまあ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可豆思賀能 麻萬能手兒奈我 安里之<可婆> 麻末乃於須比尓 奈美毛登杼呂尓
#[訓読]葛飾の真間の手児名がありしかば真間のおすひに波もとどろに
#[仮名],かづしかの,ままのてごなが,ありしかば,ままのおすひに,なみもとどろに
#[左注](右四首下総國歌)
#[校異]婆可 -> 可婆 [細]
#[KW],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,伝説,市川
#[訓異]
#[大意]葛飾の真間の手児名がいたので、真間の磯部に波もとどろくばかりに大騒ぎになったのだ
#{語釈]
おすひ 代匠紀 磯部
裳のこと 裳に波もとどろくばかりに大騒ぎ
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]尓保杼里能 可豆思加和世乎 尓倍須登毛 曽能可奈之伎乎 刀尓多弖米也母
#[訓読]にほ鳥の葛飾早稲をにへすともその愛しきを外に立てめやも
#[仮名],にほどりの,かづしかわせを,にへすとも,そのかなしきを,とにたてめやも
#[左注](右四首下総國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,新嘗,祭り,恋情,女歌
#[訓異]
#[大意]にほ鳥の水に潜るその葛飾の早稲の新嘗の祭りの時であったとしても、そのいとしい子を門口で立たしておこうものか
#{語釈]
にほ鳥の かいつぶり にほ鳥が水に潜る(かづく)からかづしかに続く
にへす 神に供える 新嘗の祭り
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安能於登世受 由可牟古馬母我 可豆思加乃 麻末乃都藝波思 夜麻受可欲波牟
#[訓読]足の音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ
#[仮名],あのおとせず,ゆかむこまもが,かづしかの,ままのつぎはし,やまずかよはむ
#[左注]右四首下総國歌
#[校異]豆 [元][類](塙) 都
#[KW],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,市川,恋情
#[訓異]
#[大意]足の音もしないで行く馬もあればなあ。あるのだったら葛飾の真間の継橋を絶えず通おうものを
#{語釈]
継橋 幅の広い川に板を継いで渡している橋
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢乃 祢呂尓可須美為 須宜可提尓 伊伎豆久伎美乎 為祢弖夜良佐祢
#[訓読]筑波嶺の嶺ろに霞居過ぎかてに息づく君を率寝て遣らさね
#[仮名],つくはねの,ねろにかすみゐ,すぎかてに,いきづくきみを,ゐねてやらさね
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,女歌,歌垣,勧誘,恋愛
#[訓異]
#[大意]筑波の嶺に霞がかかっているように、通り過ぎることが出来ないでため息をついている君を寝て帰らせなさいよ
#{語釈]
#[説明]
歌垣の歌か
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊毛我可度 伊夜等保曽吉奴 都久波夜麻 可久礼奴保刀尓 蘇提婆布利弖奈
#[訓読]妹が門いや遠そきぬ筑波山隠れぬほとに袖は振りてな
#[仮名],いもがかど,いやとほそきぬ,つくはやま,かくれぬほとに,そではふりてな
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]婆 [類] 波
#[KW],東歌,相聞,茨城県,筑波山,地名,別離,羈旅,恋情
#[訓異]
#[大意]妹の門がますます遠くなっていった。筑波山に隠れない間は袖を振ろうよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢尓 可加奈久和之能 祢乃未乎可 奈伎和多里南牟 安布登波奈思尓
#[訓読]筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか泣きわたりなむ逢ふとはなしに
#[仮名],つくはねに,かかなくわしの,ねのみをか,なきわたりなむ,あふとはなしに
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,動物,序詞,恋情,別離
#[訓異]
#[大意]筑波嶺にかかと鳴く鷲の声ではないが、大声を上げてばかり泣き続けていることだろうか。逢うこともなくて
#{語釈]
かか鳴く 擬声語 かかと鳴く
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢尓 曽我比尓美由流 安之保夜麻 安志可流登我毛 左祢見延奈久尓
#[訓読]筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山悪しかるとがもさね見えなくに
#[仮名],つくはねに,そがひにみゆる,あしほやま,あしかるとがも,さねみえなくに
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,足尾山,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]筑波嶺の背後に見える葦穂山ではないが、悪いところもちっとも見えないことだ(欠点があればあきらめもしようものなのに)
#{語釈]
葦穂山 筑波山北方足尾山
#[説明]
あばたもえくぼと同じ
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢乃 伊波毛等杼呂尓 於都流美豆 代尓毛多由良尓 和我於毛波奈久尓
#[訓読]筑波嶺の岩もとどろに落つる水よにもたゆらに我が思はなくに
#[仮名],つくはねの,いはもとどろに,おつるみづ,よにもたゆらに,わがおもはなくに
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]於毛 [元] 毛
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]筑波嶺の岩もとどろくばかりに落ちる水のように、ゆらゆらと揺らぐように自分は決して思っていないことだよ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]筑波祢乃 乎弖毛許能母尓 毛利敝須恵 波播已毛礼杼母 多麻曽阿比尓家留
#[訓読]筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ母い守れども魂ぞ会ひにける
#[仮名],つくはねの,をてもこのもに,もりへすゑ,ははいもれども,たまぞあひにける
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,女歌,恋情
#[訓異]
#[大意]筑波嶺のあちらこちらに山の番人を置くように母は自分を見張るが魂が会ったことであるよ
#{語釈]
をてもこのも 3361
守部 山の番人 2/0154
#[説明]
類歌 12/3000
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]左其呂毛能 乎豆久波祢呂能 夜麻乃佐吉 和須<良>許婆古曽 那乎可家奈波賣
#[訓読]さ衣の小筑波嶺ろの山の崎忘ら来ばこそ汝を懸けなはめ
#[仮名],さごろもの,をづくはねろの,やまのさき,わすらこばこそ,なをかけなはめ
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]良延 -> 良 [元][類]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,別離,恋情,羈旅
#[訓異]
#[大意]さ衣の小筑波嶺の山の出っ張りよ。お前を忘れて来たらこそお前を心に懸けることもないのに(忘れられないから心から離れないよ)
#{語釈]
さ衣の 緒と小を懸けた枕詞
#[説明]
筑波を離れて旅に出る男の歌か
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]乎豆久波乃 祢呂尓都久多思 安比太欲波 佐波<太>奈利努乎 萬多祢天武可聞
#[訓読]小筑波の嶺ろに月立し間夜はさはだなりぬをまた寝てむかも
#[仮名],をづくはの,ねろにつくたし,あひだよは,さはだなりぬを,またねてむかも
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]太尓 -> 太 [元][紀][細][矢]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,筑波山,地名,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]小筑波の嶺に月が立つように月になった間の夜はずいぶん経ったがそろそろまた寝てもいいなな
#{語釈]
月立し間夜は 空の月と女の月を懸けている
さはだなりぬ 数多くなった
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]乎都久波乃 之氣吉許能麻欲 多都登利能 目由可汝乎見牟 左祢射良奈久尓
#[訓読]小筑波の茂き木の間よ立つ鳥の目ゆか汝を見むさ寝ざらなくに
#[仮名],をづくはの,しげきこのまよ,たつとりの,めゆかなをみむ,さねざらなくに
#[左注](右十首常陸國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,恋情,別離,羈旅
#[訓異]
#[大意]小筑波の茂っている木の間から飛び立つ鳥が網目にかかっているように、遠目にあなたを見てばかりだろうか。寝てもいないことだが。
#{語釈]
小筑波の茂き木の間よ立つ鳥の 飛び立つ鳥が網にかかる、その網の目
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]比多知奈流 奈左可能宇美乃 多麻毛許曽 比氣波多延須礼 阿杼可多延世武
#[訓読]常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ
#[仮名],ひたちなる,なさかのうみの,たまもこそ,ひけばたえすれ,あどかたえせむ
#[左注]右十首常陸國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,茨城県,地名,北浦,植物,恋情
#[訓異]
#[大意]常陸の浪逆の海の玉藻こそ引くと切れるが、二人の仲はどうして途絶えようか
#{語釈]
浪逆の海 茨城県行方郡潮来町から香取あたりの浦
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]比等未奈乃 許等波多由登毛 波尓思奈能 伊思井乃手兒我 許<登>奈多延曽祢
#[訓読]人皆の言は絶ゆとも埴科の石井の手児が言な絶えそね
#[仮名],ひとみなの,ことはたゆとも,はにしなの,いしゐのてごが,ことなたえそね
#[左注](右四首信濃國歌)
#[校異]等 -> 登 [元][類][古][紀]
#[KW],東歌,相聞,長野県,埴科,地名,伝説,恋情
#[訓異]
#[大意]人のみんなの音信は途絶えようとも埴科の石井の娘との音信は絶えるなよ
#{語釈]
埴科の石井 長野県埴科郡 川中島の南、千曲川の東 石井は不明
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]信濃道者 伊麻能波里美知 可里婆祢尓 安思布麻之<奈牟> 久都波氣和我世
#[訓読]信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましなむ沓はけ我が背
#[仮名],しなぬぢは,いまのはりみち,かりばねに,あしふましなむ,くつはけわがせ
#[左注](右四首信濃國歌)
#[校異]牟奈 -> 奈牟 [元]
#[KW],東歌,相聞,長野県,女歌,木曽路,地名,恋愛
#[訓異]
#[大意]信濃へ行く道は新しく開いた道です。切り株に葦をお踏みつけなさるでしょう。履き物をはいていらっしゃい。あなた。
#{語釈]
信濃道 木曽路のことを言っているか。大宝二年(702)12月10日「始めて美濃国岐蘇山道を開く」、和銅六年7月7日「吉蘇路を通ず」とあって12年かけて完成。
刈りばね 切り株のこと。
くつはけわがせ
全注釈(従来の多くの解釈) 昭和33年
くつは履物。葛飾の真間の手児名を詠んだ歌に、「履をだにはかず行けども」(巻九・一八〇七)とある。履をはかないではだしであるくのが、むしろ普通だった。わがせは、男子に対して呼びかけている。
後藤利雄
原文「波氣」 「氣」は、上代特殊仮名遣「乙類」仮名
「はけ」は命令形であり、四段活用だと甲類、下二段活用だと乙類仮名が用いられる。
東歌には、乙類のケヘメを甲類で示した例は多くあるが、甲類のケヘメを乙類で示す例は他に全くない。従って従来のように「靴を履きなさい」と「履け」を自動詞四段活用の命令形だとすると甲類仮名となるので、ここは他動詞下二段命令形と見なければならない。
他動詞下二段命令形だと、「靴を履かせなさい」ということになる。
しかし誰に靴を履かせるのか。???
原文
信濃道者 伊麻能波里美知 可里婆祢尓 安思布麻之<牟奈> 久都波氣和我世
諸写本 平安朝末期 元暦校本のみ 奈牟 他はすべて牟奈
しかし、「足踏ましむな」と訓むと、誰の足を踏ませないようにするのか不明であったために、足踏ましなむ(足をお踏みになるだろう)という解釈。
素直に解釈すれば、「足を踏ませないように。靴を履かせなさい。」ということになる。しかし、使役や他動詞になるので、誰への注意なのかが不明であったために、「足踏ましなむ。靴はけ。我が背よ」として、元暦本も勝手に解釈して字を改めたかも知れない。
「くつを履く」ということへの先入観。くつは人間だけが履く物か?
実は「馬」に対しての思いということも考えられる。
「はけ」乙類に気が付いた後藤氏でも、まだこの先入観から出ていない。
遠くの方から旅をする裸足の旅人の妻が、信濃路にさしかかると開墾したばかりの路であるから切り株が残っていてあぶない。だから今は荷に付けておいて、その時になったら靴を履きなさいよ。という思いを言ったものという解釈。
澤潟注釈は、下二段活用を理解しながらも、「(その足に)靴をおはかせなさい」としてしまう。
最近の注釈
伊藤博(釈注)
信濃路は今拓いたばかりの道です。切り株に馬の足を踏ませてはなりません。ちゃんと沓を履かせていらっしゃいな。あなた。
最近の注釈
伊藤博(釈注)
信濃路は今拓いたばかりの道です。切り株に馬の足を踏ませてはなりません。ちゃんと沓を履かせていらっしゃいな。あなた。
「沓」は馬のわらじ。蹄鉄は当時はまだなかった。
筆者の幼年時代でも、藁製がしばしば用いられた。万一の場合を考えて、中馬(荷運び馬)の馬などには鞍に数本のわらじを具備したり、険難な道では、蹄鉄を打ったその上にわらじの馬沓を履かせたりして、馬をいたわったのである。
沓を履いて旅立つに決まっている夫に、「沓履け我が背」と呼びかけるのは自然とは言えない。
ただし、
「気(乙類)」が誤字である。
東歌の四段命令形を筆録者が乙類仮名に聞き取った。
「牟奈」の方が誤りで、元暦本の方が正しい
当時の農民は裸足であることが証明された場合
という可能性はあるが、上記の方が説得性が高い。
「馬」に対する概念(記号)を知らなければならない。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]信濃奈流 知具麻能河泊能 左射礼思母 伎弥之布美弖婆 多麻等比呂波牟
#[訓読]信濃なる千曲の川のさざれ石も君し踏みてば玉と拾はむ
#[仮名],しなぬなる,ちぐまのかはの,さざれしも,きみしふみてば,たまとひろはむ
#[左注](右四首信濃國歌)
#[校異]泊 [元] 伯
#[KW],東歌,相聞,長野県,千曲川,地名,女歌,恋情
#[訓異]
#[大意]信濃にある千曲の川のさざれ石もあなたが踏んだならば玉として拾おう
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]中麻奈尓 宇伎乎流布祢能 許藝弖奈婆 安布許等可多思 家布尓思安良受波
#[訓読]なかまなに浮き居る船の漕ぎ出なば逢ふことかたし今日にしあらずは
#[仮名],なかまなに,うきをるふねの,こぎでなば,あふことかたし,けふにしあらずは
#[左注]右四首信濃國歌
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,長野県,地名,千曲川,別離,女歌,恋情,羈旅
#[訓異]
#[大意]なかまなに浮いて停泊している舟が漕ぎ出したならば逢うことは難しい。今日でなかったら
#{語釈]
なかまな 地名 未詳 千曲川流域
「中」は ching 「ちぐ」と訓み得る。ちぐまなか
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]比能具礼尓 宇須比乃夜麻乎 古由流日波 勢奈能我素R母 佐夜尓布良思都
#[訓読]日の暮れに碓氷の山を越ゆる日は背なのが袖もさやに振らしつ
#[仮名],ひのぐれに,うすひのやまを,こゆるひは,せなのがそでも,さやにふらしつ
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,碓氷,別離,女歌,恋情,羈旅
#[訓異]
#[大意]日暮れ時に碓氷の山を越える日は背なの袖もはっきりとお振りになった
#{語釈]
背なのが 背な 「の」親しみの語 2/236
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]安我古非波 麻左香毛可奈思 久佐麻久良 多胡能伊利野乃 於<久>母可奈思母
#[訓読]我が恋はまさかも愛し草枕多胡の入野の奥も愛しも
#[仮名],あがこひは,まさかもかなし,くさまくら,たごのいりのの,おくもかなしも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]父 -> 久 [代匠記初稿本]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,枕詞,地名,多胡,吉井町,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]自分の恋いは今もいとしい。草枕多湖の入野ではないが、将来もいとしいことだ
#{語釈]
まさか 12/2985 現在、今
草枕 「た」にかかる枕詞として使用
多胡の入野 群馬県多野郡吉井町 多湖碑の場所
入野は、奥へ入り込んだ平野
奥 時間的な奥。将来のこと。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 安蘇能麻素武良 可伎武太伎 奴礼杼安加奴乎 安杼加安我世牟
#[訓読]上つ毛野安蘇のま麻むらかき抱き寝れど飽かぬをあどか我がせむ
#[仮名],かみつけの,あそのまそむら,かきむだき,ぬれどあかぬを,あどかあがせむ
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の安蘇の麻の束を抱えて運ぶように抱いて寝るが飽きないのを自分はどのようにしようか
#{語釈]
安蘇のま麻むら 栃木県佐野市 安蘇郡 14.3425、3434
当時上野国にもこの名前があったか
当時は上野国になっていたのか。
ま麻むら 麻の束 胸に抱えて運ぶことから抱くにかかる序詞
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 乎度能多杼里我 可波治尓毛 兒良波安波奈毛 比等理能未思弖
#[訓読]上つ毛野乎度の多杼里が川路にも子らは逢はなもひとりのみして
#[仮名],かみつけの,をどのたどりが,かはぢにも,こらはあはなも,ひとりのみして
#[左注]或本歌曰 可美都氣乃 乎野乃多杼里我 安波治尓母 世奈波安波奈母 美流比登奈思尓 / (右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の乎度の多杼里の川添の道ででもあの子に逢いたいものだ。ひとりだけで。
#{語釈]
乎度の多杼里 群馬県 地名であろうが未詳
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]或本歌曰
#[原文]可美都氣乃 乎野乃多杼里我 安波治尓母 世奈波安波奈母 美流比登奈思尓
#[訓読]上つ毛野小野の多杼里があはぢにも背なは逢はなも見る人なしに
#[仮名],かみつけの,をののたどりが,あはぢにも,せなはあはなも,みるひとなしに
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,女歌,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の小野の多杼里のあはじでも背なは逢って欲しい。見る人もいないで
#{語釈]
あはぢ 未詳
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣野 左野乃九久多知 乎里波夜志 安礼波麻多牟恵 許登之許受登母
#[訓読]上つ毛野佐野の茎立ち折りはやし我れは待たむゑ来とし来ずとも
#[仮名],かみつけの,さののくくたち,をりはやし,あれはまたむゑ,ことしこずとも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,高崎,女歌,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の佐野の菜っ葉を折ってはやし、自分は待とうよ。来ても来ないでも
#{語釈]
佐野 群馬県高崎市 東南烏川沿いに上佐野、下佐野
茎立ち あぶらな、たかななどの菜類 和名抄 草冠豊に久々太知
折りはやし 料理する意か。
釈注 呪的行為 「はやす」は栄えあらしめるようにする 16/3885
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 麻具波思麻度尓 安佐日左指 麻伎良波之母奈 安利都追見礼婆
#[訓読]上つ毛野まぐはしまとに朝日さしまきらはしもなありつつ見れば
#[仮名],かみつけの,まぐはしまとに,あさひさし,まきらはしもな,ありつつみれば
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,序詞,恋愛,逢会
#[訓異]
#[大意]上つ毛野のまぐは島戸に朝日がさすようにまぶしいようことだ。こうしてあなたの側にいて眺めていると
#{語釈]
まぐはしまと 仙覚抄 ま妙し窓 まどより、あさひのさしいれて、もののいろのくはしくみゆれば、まくはしまどといへり
考 真桑島てふ川島など有りて、その潮瀬を門(と)といふならん。さて朝日に向かふ所なるべし
地名か まぐは島門
まきらはし 目がきらきらとしてまぶしいこと
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]尓比多夜麻 祢尓波都可奈那 和尓余曽利 波之奈流兒良師 安夜尓可奈思<母>
#[訓読]新田山嶺にはつかなな我に寄そりはしなる子らしあやに愛しも
#[仮名],にひたやま,ねにはつかなな,わによそり,はしなるこらし,あやにかなしも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]毛 -> 母 [元][類][古][紀]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,太田市,金山,うわさ,恋情
#[訓異]
#[大意]新田山の嶺ではないが、他人とは寝につくようなことはするなよ。自分に寄り添うとうわさのある中途半端なあの子が、妙に愛しいことだ
#{語釈]
新田山 和名抄 新田郡新田 群馬県太田市金山
嶺と寝をかける
はしなる 間なる 中途半端な
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊香保呂尓 安麻久母伊都藝 可奴麻豆久 比等登於多波布 伊射祢志米刀羅
#[訓読]伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく人とおたはふいざ寝しめとら
#[仮名],いかほろに,あまくもいつぎ,かぬまづく,ひととおたはふ,いざねしめとら
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]奴 [元] 努
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,人目,うわさ,恋情
#[訓異]
#[大意]伊香保の嶺に雲が次々にかかるように次々と近づいてくる人も静まった。さあ寝させないよ。刀羅よ。
#{語釈]
伊香保ろ 群馬県北群馬郡伊香保町
かぬまづく 未詳 代匠紀 彼真附 彼とは上の雲をさす。真附は真は萬に真実なるに付る言葉。雲の山に附如く夫に附依る女とつづくる意なり
考 いかほの山の雨雲おはびこりつづきて可奴麻てふ所までひとつにつぎ成したり。今も可奴萬のをとて麻を出す所有り
略解、古義 鹿沼
新考 鹿沼は下野国にありて伊香保とはいたく相離れたり、。かぬまづくはおそらくはたびたび、かさねがさねなどいふ意の副詞なるべし
全釈 神沼または上沼の略。伊香保の沼のことで雲が降りてきて着く
人と 人ぞ 訛化
おたはふ 考 おらばふ 音高く言い騒ぐ
静まる、穏やかになる
とら 不明 刀羅という人の名前か。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊香保呂能 蘇比乃波里波良 祢毛己呂尓 於久乎奈加祢曽 麻左可思余加婆
#[訓読]伊香保ろの沿ひの榛原ねもころに奥をなかねそまさかしよかば
#[仮名],いかほろの,そひのはりはら,ねもころに,おくをなかねそ,まさかしよかば
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]伊香保の嶺に沿っている蓁原の根ではないが、ねんごろに行く末を心に懸けるな。今さえよければ。
#{語釈]
蓁原 蓁の原の木の根ではないが ねにかかる
奥をなかねそ 奥 将来、行く末のこと 3403
11/2728H01近江の海沖つ島山奥まへて我が思ふ妹が言の繁けく
かね かける
まさか 3403 今、現在
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]多胡能祢尓 与西都奈波倍弖 与須礼騰毛 阿尓久夜斯豆之 曽能可<抱>与吉尓
#[訓読]多胡の嶺に寄せ綱延へて寄すれどもあにくやしづしその顔よきに
#[仮名],たごのねに,よせつなはへて,よすれども,あにくやしづし,そのかほよきに
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]之 [元] 久 / 把 -> 抱 [矢]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,多胡,吉井町,序詞,怨恨,恋情,口説き
#[訓異]
#[大意]多湖の嶺に引き寄せる綱を掛けて寄せるように、あの子を言い寄せようとするがどうして寄ってこようか。落ち着いていて。その顔はいいのになあ。
#{語釈]
多胡の嶺 群馬県多野郡吉井町
寄せ綱延へて 寄綱を掛けて
祈年祭祝詞 遠き国は八十綱(やそつな)うち挂(か)けて引き寄する事の如く
出雲国風土記 三身(みつみ)の綱(つな)うち挂(か)けて、霜黒葛(しもつづら)くるやくるやに、河船(かはふね)のもそろもそろに、国来々々(くにこくにこ)と
引き来縫(きぬ)へる国は、
あにくや どうして寄って来ようか(来るはずもない)
しづし 重石 沈石 落ち着いている
あ 憎くや しづし
あに くやし づし
あに 来や しづし
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]賀美都家野 久路保乃祢呂乃 久受葉我多 可奈師家兒良尓 伊夜射可里久母
#[訓読]上つ毛野久路保の嶺ろの葛葉がた愛しけ子らにいや離り来も
#[仮名],かみつけの,くろほのねろの,くずはがた,かなしけこらに,いやざかりくも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,赤城山,序詞,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の黒保の嶺の葛の葉の蔓がどこまでも延びるように、かわいいあの子にいよいよ離れて来たことだ
#{語釈]
久路保の嶺ろ 赤城山の一峰。黒檜岳
葛葉がた 13/3323「かた」は、14/3412など蔓、条(すぢ)の意や、蔓草の意に用いら れた。そこで「かた」は、「かづ(葛)」と語源は同じ。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]刀祢河泊乃 可波世毛思良受 多太和多里 奈美尓安布能須 安敝流伎美可母
#[訓読]利根川の川瀬も知らず直渡り波にあふのす逢へる君かも
#[仮名],とねがはの,かはせもしらず,ただわたり,なみにあふのす,あへるきみかも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]泊 [元] 伯
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,利根川,序詞,女歌,恋愛
#[訓異]
#[大意]利根川の川瀬もわからずにむやみに渡り波に合うように、偶然会ったあなたであることだ
#{語釈]
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊香保呂能 夜左可能為提尓 多都努自能 安良波路萬代母 佐祢乎佐祢弖婆
#[訓読]伊香保ろのやさかのゐでに立つ虹の現はろまでもさ寝をさ寝てば
#[仮名],いかほろの,やさかのゐでに,たつのじの,あらはろまでも,さねをさねてば
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,序詞,人目,恋愛,逢会
#[訓異]
#[大意]伊香保の八坂の堰に立つ虹のように人目につくまで寝て寝通すことが出来たら
#{語釈]
やさかのゐで ゐでは堰。所在未詳 榛名山麓のどこか。
現はろ 夜が明けて人目につく
多く会い過ぎて、つきあいがばれて噂になる
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 伊可保乃奴麻尓 宇恵古奈<宜> 可久古非牟等夜 多祢物得米家武
#[訓読]上つ毛野伊香保の沼に植ゑ小水葱かく恋ひむとや種求めけむ
#[仮名],かみつけの,いかほのぬまに,うゑこなぎ,かくこひむとや,たねもとめけむ
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]伎 -> 宜 [元][類][古]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,植物,譬喩,恋情,反省
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の伊香保の沼で栽培している小水葱よ。こんなにも恋い思うとして種を探したのだろうか
#{語釈]
植ゑ小水葱 みずあおい科の一年草。葉や芽を食用にする。
種求めけむ 女を捜したであろうか。
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 可保夜我奴麻能 伊波為都良 比可波奴礼都追 安乎奈多要曽祢
#[訓読]上つ毛野可保夜が沼のいはゐつら引かばぬれつつ我をな絶えそね
#[仮名],かみつけの,かほやがぬまの,いはゐつら,ひかばぬれつつ,あをなたえそね
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,植物,序詞,採草歌,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の可保夜が沼のいはゐつらを引くとずるずるとついて来るように自分とは途絶えてはくれるな
#{語釈]
可保夜が沼 所在未詳 あるいは天明三年の浅間焼、吾妻川泥おしの時に流失したか。
いはゐつら 未詳 蔓草の植物 すべりひゆ、じゅんさい、ねなしかずら等
ねれつつ ぬるぬると同じ
#[説明]
類歌
14/3378
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣努 伊奈良能奴麻乃 於保為具左 与曽尓見之欲波 伊麻許曽麻左礼 [柿本朝臣人麻呂歌集出也]
#[訓読]上つ毛野伊奈良の沼の大藺草外に見しよは今こそまされ [柿本朝臣人麻呂歌集出也]
#[仮名],かみつけの,いならのぬまの,おほゐぐさ,よそにみしよは,いまこそまされ
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,植物,序詞,恋情,作者:柿本人麻呂歌集
#[訓異]
#[大意]上つ毛野のいならの沼の大藺草よ。よそながら見ていた時よりは今こそ思いがまさるよ
#{語釈]
伊奈良の沼 所在未詳 群馬県邑楽郡板倉町
大藺草 太藺(ふとい) 池沼中に群生。茎は七ミリ程度。丈は二メートル
筵を織る
刈り取って筵にした時の方がの意の序詞
#[説明]
よそながら見ていた時も恋しく思っていたが、つきあったらよけいに思いがまさることだと言ったもの
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]可美都氣<努> 佐野田能奈倍能 武良奈倍尓 許登波佐太米都 伊麻波伊可尓世母
#[訓読]上つ毛野佐野田の苗のむら苗に事は定めつ今はいかにせも
#[仮名],かみつけの,さのだのなへの,むらなへに,ことはさだめつ,いまはいかにせも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]奴 -> 努 [元][類]
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,佐野,高崎,恋情
#[訓異]
#[大意]上つ毛野の佐野田の苗のむら苗ではないが、占いで結婚を決心しました。今更どうしましょうか
#{語釈]
佐野田 栃木県佐野郡玉村町斎田 群馬県高崎市東南部
むら苗 未詳 偏って生えている苗(直まき) 占いを引き出す序
事は定めつ 結婚を決めたこと
#[説明]
#[関連論文]
#[題詞]
#[原文]伊可保世欲 奈可中次下 於毛比度路 久麻許曽之都等 和須礼西奈布母
#[訓読]伊香保せよ奈可中次下思ひどろくまこそしつと忘れせなふも
#[仮名],いかほせよ,*******,おもひどろ,くまこそしつと,わすれせなふも
#[左注](右廿二首上野國歌)
#[校異]次 [元][類][古] 吹
#[KW],東歌,相聞,群馬県,地名,難訓,恋情
#[訓異]
#[大意]意味不明
#{語釈]
伊香保せよ 伊香保瀬から 伊香保の湖の川の瀬から
奈可中次下 難訓
思ひどろ 未詳 思い出るか
くまこそしつと 未詳
忘れせなふも わすれられないことだ
#[説明]
#[関連論文]