「モクレンが怖いときがある」という夫の言葉にハッとしたことがあります。
私より、はるかに長い時間、モクレンの木と過ごしてきた人の言葉でした。
「風の吹く夜、音がするんよ。ザワザワ…ザワザワ……。窓に映る葉っぱの影も怖いんよ。」
私はまだ怖いモクレンを知りません。少しくやしくなりました。
ヒューゥ、ヒューゥという風の音に、モクレンの葉はサラサラ、サラサラ……
その夜も、やっぱり私には、モクレンの音よりも、風の音の方が不気味に聞こえました。
むしろモクレンの音はやさしい楽器のようでした。
サラサラ、サラサラ…を聞きながらいつのまにか眠ってしまいました。
「全然怖くないじゃん」

確かにモクレンは太陽の下と月の下では違った顔を見せます。
これまで私も窓の葉の影を見ていましたし、モクレンの音だって耳に入っていたはずです。
ただ無意識のうちに。
今回、怖いという話から、ほとんど目でしか感じていなかったモクレンを
意識して、耳でも感じることができました。
自然に対して、耳の感覚をもっと研ぎ澄ましてみるのも面白そうです。

いつか私も怖いモクレンに会えるのかな…