紅地桐文散錦直垂


身丈(みたけ)79.0cm、裄(ゆき)95.0cm。この直垂は、鎧(よろい)の下に着用する鎧直垂(よろいひたたれ)であり、永録3年(1560)毛利元就が正親町天皇の即位料を献上したことに対し、将軍足利義輝から褒美として与えられたものである。江戸時代に松平定信が編纂した『集古十種(しゅうこじっしゅ)』にも記載されるなど、古来より著名なものである。
保存状態も良く、桃山時代以前の鎧直垂としては稀有の遺例とされ貴重である。上下とも表は地・文とも緯糸(よこいと)の三枚綾地に、白・黄・紫色で桐丸文を、萌葱(もえぎ)・濃萌葱(こいもえぎ)系で地の雲文を織出す風通様大和錦であり、裏は白平絹の袷仕立(あわせじたて)である。袖口を小さくして袖括りをつけ、袴(はかま)の裾にも括りを設けて活動性をもたせている。菊綴は打紐でなく總状のものをつける。
鎧直垂は鎧の下に着用するため、通常の直垂より小ぶりに仕立てられているが、武家の台頭とともに、戦場で武威を示すための晴れ着として、錦など豪華なものが作られるようになったという。