硫化水素の話
温泉地に行ったとき、かすかに特有の臭いが漂ってくることがあります。「硫黄の臭いがする」と、よく言われます。でも硫黄は黄色の固体で無臭のはずです。間違いはどうして起こるのでしょうか。日本は火山国なので、各地に硫化水素を含む火山性のガスが噴出しているところがあります。噴出口の近くには硫化水素が分解し、黄色の硫黄が付着していることが多いのです。気体は目には見えません。噴出口近くの付着した硫黄のあたりから漂ってくる硫化水素の臭いと一緒に混同した結果起こる間違いなのです。でもあまり詮索すると温泉情緒がなくなりますよ。
九州のある温泉宿に宿泊したとき、宿の方から「うちの温泉は効能が強いので、長湯をすると"湯あたり"するので注意して下さい」といわれました。すごい温泉だと期待しながら浴室へ行きました。すると沸き口からお湯と一緒にぼごぼごとガスがでています。窓が開けてありますが、 硫化水素の臭いがしています。これは長湯をすると”湯あたり”ではなく"ガス中毒"を起こすのです。すごい温泉でした。
三宅島の方々の避難生活もだいぶ長くなりました。空気中の濃度が500ppmをこえると呼吸麻痺を起こしますが、速く生活に支障がないようになればいいですね。
だいぶ前の話ですが、群馬県と長野県の境の白根山の麓でスキーヤーが遭難した事故がありました。風のないとき硫化水素の貯まっている窪地に入ったための事故です。硫化水素は分子量36で、空気より重い(平均分子量28.8)ために起こった事故です。
栃木県那須郡那須町湯本に殺生石(せっしょうせき)という石があります。このあたりは硫化水素等火山性のガスのでているところです。色々おもしろい物語があるようです。謡曲の題目にもなっています。
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