4.2 おこ歌(笑い歌)
郷閭の士女、酒を提へ琴を抱きて、歳毎の春と秋に、手を携へて登り望け、楽飲み歌ひ舞ひて、曲尽きて帰る。歌の詞に云はく、
あられふる 杵島が岳を 峻しみと
草採りかねて 妹が手を執る。
是は杵島曲なり。 (肥前国風土記逸文 杵島山)
今の佐賀県の杵島山で行われていた歌垣の様子が記されています。この歌は
霰が降りきしむ音がするその杵島が岳が険しいのでと、草を手に採り損ねて妹の手を取ることだ
という意味に解せられますが、草にしがみつきながら恋人と険しい山を登るイメージで見られるのですが、その草を取りそこなってかわりに恋人の手を取っていたら、山から落ちます。そうでなければ山があまりにも険しいので、登ることはやめて恋人と遊ぼうよと言っている歌とも解せられます。どちらにしても、しんどいことは止めて(あまりにもしんどいので)恋人の手を取ってしまったという自嘲的な内容です。
おそらく歌垣で笑いながら楽しまれた歌なのでしょう。
小林に 我を引き入て 奸し人の面も知らず 家も知らずも (日本書紀歌謡 111 )
日本書紀の大化の改新(乙巳の変)で蘇我入鹿が誅殺されることを予兆した歌(童謡と呼ばれる)です。急に暗殺されたので、殺した人の顔もわからないしどこの誰ともわからないという意味ですが、事件を予兆出来るはずはなく、後から解釈されたものでしょう。本来は、歌垣の笑い歌と思われます。
ちょっと口にするのははばかられそうな意味ですが、林の中に私を引きずり込んでHをした人の顔もわからないし、どこの誰ともわからない。という意味になります。
男となにをしたのに相手がどこの誰ともわからないとは馬鹿な女だと笑いけなしている歌になります。おそらく男がからかい半分に女に歌いかけたものなのでしょう。